講談社選書メチエ<br> 帝国議会―“戦前民主主義”の五七年

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講談社選書メチエ
帝国議会―“戦前民主主義”の五七年

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  • サイズ B6判/ページ数 288p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062586153
  • NDC分類 314.12
  • Cコード C0321

出版社内容情報

戦前の議会は、本当に無力だったのか? 貧乏代議士は政治に何を夢見たのか? 現在の国会の原点、「帝国議会」の誕生から終焉まで。明治憲法下の〈日本の国会〉である「帝国議会」の成立から終焉までの歴史をたどり、その光と陰を検証する。
一般に「帝国議会」といえば、絶対的な天皇制下での制限選挙による不完全な民主主義、軍部の暴走を止められなかった無力な議会――といったイメージだろう。しかし、第二次世界大戦以前に、アジアの非キリスト教国で憲法と議会制度の定着に成功したのは日本だけであり、その裏には、官民一体となった営々たる近代化の努力があった。
また、戦後の国会との連続性の面でも、「二院制」「中選挙区制」や、選挙運動への規制の強さなど共通する特徴をすでに持っていた。そしてなにより、鳩山一郎ら戦後日本を方向づける大きな役割を果たした政治家の多くが、帝国議会に政治家としての原体験をもっていた。
本書では、現在の「常任委員会制」と対照的に本会議重視の「読会制」や、選挙の制度と実態、政党の役割、代議士の生活、弁論術と放言・失言の数々などを取り上げ、原敬や斎藤隆夫、尾崎行雄らの事績をみながら、人々が「議会」に理想を抱き、「政治」に熱く心を寄せた時代を描いていく。そして、戦時体制へと向かう帝国議会の限界と、戦後の国会誕生の過程を検証する。「議会政治とは何か」が根源的に問われている現在、その原点を知るための必読の書。

序章  そびえ立つ「帝国議会議事堂」
第一章 支える枠組み、定着する慣習
1 憲法の中の帝国議会  
2 衆議院議員選挙法の変遷 
3 議院制度の諸相
第二章 対峙する政党
1 二大政党の源流
2 立憲同志会の登場
3 二大政党への道
4 二大政党制は理想であったか
5 アマチュアリズムとプロフェッショナリズム
第三章 活動する代議士たち
1 職業としての代議士 その1 
2 職業としての代議士 その2
3 代議士貧乏物語 その1―乏しい歳費
4 代議士貧乏物語 その2―選挙とカネ  
5 政党とカネ
6 ひきあわない代議士稼業  
7 素朴な疑問
第四章 飛び交う弁論、時に腕力
1 日本的雄弁の虚実
2 斎藤隆夫「反軍」演説をめぐる問題 
3 ディベート型弁論の光と陰
4 あるべき弁論能力の可能性
5 番外編 その1 失言と放言
6 番外編 その2 帝国議会血風録
第五章 彷徨する帝国議会改革論
1 議会政治の危機 その1―選挙制度改革論
2 議会政治の危機 その2―議院制度改革論
3 議会改革の展開
5 戦時体制への道
第六章 走る戦後改革
1 帝国議会から国会へ その1―選挙制度
2 帝国議会から国会へ その2―議院制度
結章  見られる「国会議事堂」


村瀬 信一[ムラセ シンイチ]
著・文・その他

内容説明

明治憲法下の制限選挙による不完全な民主主義、昭和期には軍部の暴走を止められなかった無力な議会―。しかし、帝国議会はまた、新たな政治を創ろうと理想を抱いた人々の、営々たる努力の成果でもあった。代議士の苦しい生活と、本会議重視の「読会制」。尾崎行雄、原敬、斎藤隆夫、永井柳太郎らの弁論術。繰り返される放言・失言、そして乱闘…。日本人の「原体験としての議会政治」を見つめなおす。

目次

序章 そびえ立つ「帝国議会議事堂」
第1章 支える枠組み、定着する慣習
第2章 対峙する政党
第3章 活動する代議士たち
第4章 飛び交う弁論、時に腕力
第5章 彷徨する帝国議会改革論
第6章 走る戦後改革
結章 見られる「国会議事堂」

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かんがく

14
個人的に戦前政治史はかなり好きな範囲で、政治家の評伝などの個別の内容については多く学んできたが、本書は帝国議会の制度や慣習についてまとめてあるので新たな視点を獲得できた。選挙の買収、議場での失言や暴力などダーティな部分の記述も多くて面白い。2023/06/27

MUNEKAZ

9
内閣や政党史ではなく、「帝国議会」の制度や実際の運用などを紹介した一冊。議員たちの回想や証言も多く取り入れ、戦前の国会論戦や政治活動が生き生きと伝わってくる。現在の国会との相違点、とくに個別の委員会がなく読会で審議を行う点や、歳費の支給が少なく代議士が経済的に厳しい立場であったことは興味深いところ。また英米と比較しての日本の議員たちの演説の特徴として、当時の基礎教養であった漢文の影響を挙げているのも面白い。いずれにしても敗戦の焼け野原からいきなり日本の民主主義が始まったわけではないことがよくわかる。2019/07/29

さとうしん

3
議会政治史・政党史といった通史的な内容よりは、代議士と「カネ」の問題・弁論・議会改革の流れといった各論が読みどころ。特に弁論に関しては、英米の政治家の弁論との比較、「漢文脈」との関連など、分析のしかたが面白い。対句の多用については、孫文・毛沢東といった中国の革命家や、現代中国の政治家の弁論と比較してみるのも面白いかもしれない。2016/02/12

ジュンジュン

2
本書の狙いは、GHQがその影響力を行使して生まれた現国会を称揚するため、不当にマイナスイメージのついた戦前議会を正当に評価しようといったところか。個人的見解としては、ある程度は成功しているものの、帝国議会の脆弱性や限界(代議士の社会的地位の低さや戦争という非常事態でしか改革案が成立しなかった点など)もまた、浮き彫りになったように感じた。ひとつ面白かった点は、戦後イギリス式からアメリカ式(委員会制の採用)に変わったことが、つまらない国会中継を生んだ原因かと気づけたこと。2016/10/19

matsuri_n

1
模糊としていた戦前の議会制度について理解が深まる良書。平易でありながら政治史の醍醐味に満ちている。今日的な意味でも、議会は国民にとってどうあるべきかという示唆に満ちていて、多くの人に読まれるべき本だと思う。2021/07/18

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