講談社選書メチエ<br> 源実朝―「東国の王権」を夢見た将軍

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講談社選書メチエ
源実朝―「東国の王権」を夢見た将軍

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  • サイズ B6判/ページ数 288p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062585811
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0321

出版社内容情報

詩魂を以て史料に対し、史眼を以て和歌に向き合うときにみえてくるものとは何か? 「文弱の貴公子」という八百年来の誤解を解く快著 「悲劇の将軍」「文弱の徒」「青白きインテリ」「北条氏の傀儡」……。多くの人の抱く三代将軍実朝のイメージはこのようなものでしょう。太宰治や小林秀雄、吉本隆明もつまるところ同様の解釈から逃れられてはいません。
 文学側のこうしたイメージのいっぽうで歴史学の側も実朝像を捉えかねているきらいがありました。これは彼が若くして暗殺されてしまった以上、しかたのないことではありますが、やはり承久の乱後に固まった鎌倉優位の政治構造を、それ以前の時代に投射した論、すなわち結果から過去を規定してしまったものといえます。しかし、近年の鎌倉幕府成立史研究は頼朝の晩年から承久の乱までの時期の京都と鎌倉の関係はきわめて流動的であり、事態がどう転んでもおかしくなかったことを明らかにしているのです。
 詩魂を以て史料に対し、史眼を以て和歌に向き合わねばなりません。そのときにみえてくるのは「東国の王権」を夢見た男の肖像であり、その歌も、京の公家との縁組みも、有名な宋への渡航計画もまったく違った姿ををあらわしてきます。兄の失脚と暗殺からその位についたという経緯も、当時の政治的諸相から判断すればけっして彼のトラウマになどなっていなかったといっていいのではないか。当然、暗殺事件の背景の検討もしますが、おそらくそれは従来の北条義時黒幕説にはならないはずですし、永井路子の三浦義村首謀者説の慎重な吟味も必要になるでしょう。
 本書は『源平合戦の虚像を剥ぐ』『後白河法皇』『頼朝の精神史』『大仏再建』など鎌倉時代史研究をリードしてきた選書メチエが送る、「八百年来の誤解」から実朝を解放する一書であります。

第一章 実朝擁立の舞台裏
第二章 成長する将軍
第三章 青年将軍の歌
第四章 激動の一年
第五章 未完の東国王権
エピローグ ─新たな実朝像の創出


坂井 孝一[サカイ コウイチ]
著・文・その他

内容説明

建保七年(一二一九)一月二十七日、鎌倉鶴岡八幡宮社頭。大雪のなか右大臣実朝は甥・公暁の凶刃に斃れる。以来八百年、その人物像は誤解されつづけてきた。「文弱の貴公子」「憂愁と孤独の人」「北条氏の傀儡」…。しかし、歴史学の眼で和歌に向きあうとき、別の声が聞こえてくる。政治状況の精緻な分析と、歌句への犀利な読みこみが、青年将軍の真の姿と夢を明らかにする!

目次

プロローグ 出でていなば主なき宿となりぬとも
第1章 擁立の舞台裏
第2章 成長する将軍
第3章 歴史家の視線で読む和歌
第4章 建暦三年の激動
第5章 未完の東国王権
エピローグ 新たな実朝像の創出

著者等紹介

坂井孝一[サカイコウイチ]
1958年、東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得。現在、創価大学教授。専攻は日本中世史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

16
実朝暗殺の黒幕については北条氏も三浦義村の説も否定。筆者は実朝の後継問題について追い詰められた公暁が乱心して起こした単独犯とする。東国に独自の王権を作ろうと模索し、朝廷と関わり積極的に動いた実朝の姿が描かれていたのが新鮮だった。それは金槐和歌集を編纂し、百人一首にも選ばれた歌人としての実朝と相反するものでもないよなあと。あの頼朝と政子の子なのだから、ひたすら激しく、ひたすら強く弱く、ものすごく色々な面があって、才能があったのだと思う。それが一つ一つ潰されて絶望していった暗殺までの数年だったんだろうなあ…。2014/10/10

umeko

11
和歌は苦手なのだが、それでも和歌から実朝の実像に迫ったところが読み応えがあり興味深かった。実朝の従来のイメージが変わり、その最後がこれまで以上に劇的なものとなった。2020/09/26

はるわか

11
長男頼家の後見人比企一族、平賀義信。次男実朝の周囲を固める北条氏(時政、政子、阿波局)。頼朝のクーデター封じ:範頼誅殺、甲斐源氏安田義定・義資誅殺、一条忠頼誅殺。頼朝の急死、頼家と有力御家人の対立:宿老十三人の合議制、梶原景時滅亡、阿野全成粛清。比企の乱(圧倒的な比企一族への北条氏の捨て身の反撃)、頼家暗殺。畠山重忠の滅亡。牧氏事件(北条時政失脚、平賀朝雅誅殺)。金槐和歌集。和田合戦(北条義時の挑発、三浦義村の裏切り、和田義盛一族の滅亡)。実朝暗殺は公暁の単独犯行(説)。源氏の血を引く将軍候補の誅殺。2016/04/12

ジュンジュン

10
源実朝は、鎌倉三代目将軍としては×、歌人としては◎らしい。著者は歴史学と和歌を用いて、そんな彼を積極的に評価しようとする。イメージを覆すのは難しい。マイナスを払拭しようとするあまり、過剰に評価するきらいがある。本書も然り。ただ、著者の愛着をひしひしと感じて、嫌いじゃない。それよりも、和歌を駆使した考察にびっくり!これじゃ史家というより”詩家”?2022/04/29

MUNEKAZ

6
源実朝の評伝。読みどころは「金槐和歌集」をもとに和歌から実朝の内面に迫った部分。賛否もあると思うが、文弱で薄幸の人というイメージを覆し、父・頼朝を超えようと苦闘した将軍・実朝の像が導き出されている。また著者は「柳営亜槐本」の筆者を足利義政に比定しているが、そうだとすれば幼少で将軍になり、御家人の統制と自身の権威確立に努めた実朝の生涯を義政はどう眺めたのだろう。自らに重なる部分も多かったのではないだろうか。2019/01/30

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