出版社内容情報
9・11の直前と直後に、フランスの政治社会学者・イスラーム政治研究者ジル・ケペルはパレスチナ・イスラエルからエジプト、レバノン、シリアなど、中東の現地に頻繁に足を伸ばし、現地の反応や状況を微細に読み解いていく。
グローバル化の波の中で米国への憧れと敵意に揺れる若者たちを微細に描き、湾岸の繁栄の裏に潜む危機、ムスリム世界内部の分裂と闘争という最大の問題に言及していた本書は、9・11以後の10年とさらにその先を、鋭敏に見通していた。
訳者による詳細な注釈と独自の地図を多数盛り込んだ「中東の政治的ガイドブック」の決定版。
内容説明
「中東」とは何か?!実感としてわかるための、第一級の政治的ガイドブック。
目次
第1部 ポスト9・11時代の中東(エジプトを嗅ぐ;レバントの街道をゆく;ペルシア湾岸の活況;エジプトに還る)
第2部 インティファーダの聖地(イスラエルとパレスチナ―紛争の日録)
第3部 傷ついたアメリカ(グラウンド・ゼロから)
著者等紹介
ケペル,ジル[ケペル,ジル][Kepel,Gilles]
1955年生まれ。パリ国立政治学院教授。専攻は中東政治、イスラーム政治研究
池内恵[イケウチサトシ]
1973年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授。専攻はイスラーム政治思想史、中東地域研究。『現代アラブの社会思想』で大佛次郎論壇賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Koning
28
訳者のブログで絶版になってたが再版ということで図書館にあったのを借りてみた。が、これは買っていいレベルだった。9.11直前のエジプト、レバント、湾岸諸国の空気感。そして何よりウラマー、カラダーウィーとのジハード論争とジハードよりフィトナの危機感。そしてハンチントンの文明の衝突論が逆利用されている件は今もイスラーム国と名乗るテロリスト共のことを考える時と日本だと箸にも棒にも引っかからない対談本がベストセラーになっちゃう下地になった単純な文明対立的モノの見方の危うさを再認識させられる。2015/05/01
ジュール リブレ
14
日本人にとって、実は空白域の中東を縦横に、走り回り、アラブ人とも、マグレブとも、そしてユダヤとも交流し、本音の意見を言い合える、そんな著者。外交官でもないのに、この層の暑さ。日本は既にかなわないなぁ…2011/11/29
中島直人
11
(図書館)9.11直後の中東地域における生の雰囲気や声。また、そこからの変化と方向性が、さりげない文章で展開されている。2018/11/20
うえ
8
911以後、数ヶ月のアラブ様子を伝える貴重な日記。ハンチントン『文明の衝突』がベストセラーになっているとか。西洋文明とは相容れない、という言説が西洋に過激な他者として対抗するのを正当化するとか。更にはかつてサルトルと並び称された元フランス共産党のガロディの本が馬鹿売れ。党内対立に敗れ、カトリック、プロテスタントを経てムスリムに。そこでガロディはホロコースト否定論をぶちあげ、アラブ世界で西洋最大の哲学者と呼ばれるようになった。ある地域でのオカルト本が、別の地域では高度な理論書として扱われることもあるのだ。。2022/03/21
むとうさん
3
イスラーム世界に限らず一つの世界を知るには、その場に行って人と会って…とするのが最善。また来れば変化がわかる。産油国の華やかさと、それを快く思わない世代と自明と見てきた世代との対立。イスラーム世界における「アラブ人」の立ち位置。宗教的な名声を巡って争う指導者たち。ポスト9.11というだけに少し古いのだけど、古いからこそ答え合わせ的に読む面白さもある。イスラーム世界内部でも、欧米世界に対する見方は立ち位置、利害で異なる。その辺の微妙な差を読めないとイスラームはわからない、ということ。2012/02/11