出版社内容情報
〈よい〉教育とは何か。根本から徹底的に考える。「ゆとり」か「つめこみ」か、「叱る」のか「ほめる」のか──教育の様々な理念の対立はなぜ起きるのか。教育問題を哲学問題として捉えなおし現代教育の行き詰まりを根本から解消する画期的著作! (講談社選書メチエ)
序章
第一章 教育をめぐる難問
第二章 アポリアを解く
第三章 どのような教育が「よい」教育か
第四章 実践理論の展開序説
終章
あとがき
註
苫野 一徳[トマノ イットク]
著・文・その他
内容説明
「ゆとり」か「つめこみ」か「叱る」のか「ほめる」のか―教育の様々な理念の対立はなぜ起きるのか。教育問題を哲学問題として捉えなおし現代教育の行き詰まりを根本から解消する画期的著作。
目次
第1章 教育をめぐる難問(教育の論じられ方;教育のいま;教育学の混迷)
第2章 アポリアを解く(現象学の援用;欲望論的アプローチとその優位)
第3章 どのような教育が「よい」教育か(私たちはどのような生を欲するか;「よい」社会とは;「よい」教育とは)
第4章 実践理論の展開序説(教育方法の根本発想;「よい」教師とは;「よい」教育行政とは)
著者等紹介
苫野一徳[トマノイットク]
1980年生まれ。早稲田大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。早稲田大学教育・総合科学学術院助手などを経て、現在日本学術振興会特別研究員(PD)。専攻は教育学・哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りょうみや
14
難しいことをとても分かりやすく書いてくれている印象。苫野氏の教育本は何冊か読んだが、本書が苫野氏の教育に関する考え方、またそれに至った道筋を漏れなく含み、基になっている内容だと思える。教育のみならず哲学、社会学の面からも多いに勉強になった本。2018/03/21
すみけん
10
「よい」教育とはなにか、教育哲学の観点から研ぎ澄まして論じられている。〈自由の相互承認〉がキーワードになって、それをベースに理論が展開されている。やや難解な表現もあるが、面白かった。批判的な見方もあるだろうが、それはそれでいい。建設的な議論が積み重なっていくことで子供たちが豊かな人生を歩んでいけるなら。2017/10/15
Nobu A
7
とても興味深い序章。教育を取り巻く問題を筆者、独特の欲望論的アプローチで検証、考察。「ゆとり」と「詰め込み」、「叱る」と「褒める」等の対立に正解はなく、教育の本質は各人の自由と社会における相互承認の教養を通しての実質化だと主張。随所に示唆に富むが、かなり専門書寄り。正直、よく解らない箇所も多い。どうしてかなと思ったら、援用に使われたヘーゲル哲学やフッサール現象学を始め哲学が数多く引用され、アポリア、レゾンデートル等一般人には馴染みがないカタカナ語や抽象的な記述も多い。だが、筆者の他書も読んでみようと思う。2018/09/09
前田まさき|採用プロデューサー
6
苫野先生は、むずかしい哲学用語・概念を、わかりすく説明するのがほんとうに上手だなと思う。冒頭、「本書では現象学とヘーゲルを用いて、教育の本質・正当性の原理を明らかにする」みたいなことが書かれており、「は!?」と思ったけれど、初学者の自分でもちゃんと理解できる内容になっていた。結論だけすっ飛ばしていうと、●教育の「本質」とは「各人の自由、および社会における〈自由の相互承認〉の〈教養=力能〉を通した実質化」(p.28)●「よい」教育とは、「〈一般福祉〉に適っている、あるいはこれを促進するもの」(p.137)。2019/12/08
とある本棚
4
文句なしに面白い。ヘーゲルやデューイの難しい思想を著者の分かりやすい筆致で噛み砕いて説明されており、また論理構成も頭に入ってきやすい形となっている。政治哲学の正義論についてはある程度詳しく知っていたが、今の政治哲学の論争を現象学的に、ある種メタ的に捉えて更にそれを教育学に援用するというのは関心した。前半と比べると荒削りではあるものの、後半には哲学理論と現実を架橋するための実践にも触れられているのも素晴らしい。2021/09/12