内容説明
クウェイト、カタル、バハレーン、UAE、オマーン。湾岸産油国は、驚くべき特徴に満ちている。莫大な石油収入によって、所得税はなし、教育費は無料。一人あたりのGDPが日本の二倍の国もある。一方で、「経済発展が民主化を促進する」という定説はあてはまらず、君主制が維持されたままだ。二〇〇九年のドバイ・ショックで、世界経済における影響の大きさを知らしめた「石油王が統治する金満国家」を詳細に分析、政治・経済・社会の実体に迫る。
目次
第1章 湾岸産油国とは
第2章 国家形成への道のり
第3章 レンティア国家仮説
第4章 王朝君主制
第5章 国民統合
第6章 湾岸産油国型エスノクラシー
第7章 湾岸産油国の未来
著者等紹介
松尾昌樹[マツオマサキ]
1971年、東京都生まれ。東北大学大学院国際文化研究科博士課程修了。博士(国際文化)。現在、宇都宮大学国際学部国際社会学科准教授。専攻は湾岸アラブ諸国のナショナリズムと国史形成(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
3
湾岸アラブ諸国(クウェート、バーレーン、カタール、UAE、オマーン)の社会・経済体制を、「王朝君主制」、「レンティア国家」、「エスノクラシー」といったキーワードを基に読み解く。王族による官職独占、資源収益に依拠した高い社会保障、出稼ぎ外国人労働者に重度に依存した社会構造など、隣国サウジアラビアと共通する面が多いので、そちらに関する本と併読するとより理解が深まるかもしれない。2012/08/05
ドウ
2
サウジを除く湾岸地域の産油国について、「レンティア国家」や「王朝君主制」、「国民統合(ここではナショナリズムとは区別されている)」、「エスノクラシー」の4つの分析枠組みを用いて論じている本。バハレーンの自国民労働者の部分など詰めの甘い部分もあるが、各国の実例を適宜述べながら分析枠組みについても懇切丁寧に説明していてとても役立った。もっと早く読んでおけば良かった(上記の分析枠組みについての英語文献を授業でヒイヒイ言いながら読んだから)。2015/03/09
天茶
1
★★★ 個人的にクウェイトに興味あったのだけど、主に建国時期の歴史しか知らなかったので、現在の体制に知れてよかった。 「レンティア国家」や「王朝君主制」という概念について始めて知った。この二つが湾岸産油国の非民主的な君主制がいまだに強固に存在できる仕組みだという。 2020/04/06
こずえ
0
サウジ以外の石油産油国は政治体制が独特なのだが、今後石油資源が枯渇していく中でこの体制がどうなるかについて簡潔にまとまっててよい。 中東に商機を見出したい人は読むべき
miharasi_mamiya
0
サウジを除く湾岸産油国の国がどう成り立っているかについて分析したもの。石油収入で成り立っている独特の国家の仕組みが興味深かった。2016/03/14