出版社内容情報
私たちは天皇をいかなる存在にしてきたのか。
「象徴」という存在の内実を、政治家、宮内庁、知識人、メディアはいかに作り上げてきたか。敗戦後の退位論から、「人間宣言」、「ご成婚」ブームまで丹念に追う。
内容説明
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴(日本国憲法第一条)。この曖昧で抽象的な規定の内実を、政治家、宮内庁、知識人、そしてメディアはいかに作りあげたか。敗戦後の昭和天皇退位論から、「人間宣言」とそのアピールたる全国巡幸、明仁皇太子の外遊と成婚までを辿り、戦後天皇制の本質を鋭く抉り出す。
目次
第1章 昭和天皇退位論
第2章 天皇、「人間」となる
第3章 メディアの中の象徴天皇
第4章 揺れる象徴天皇像
第5章 「文化平和国家」の象徴として
第6章 青年皇太子の登場と象徴天皇制の完成
著者等紹介
河西秀哉[カワニシヒデヤ]
1977年愛知県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程後期満期退学。現在、京都大学大学文書館助教。専攻は、日本近現代史。博士(歴史家)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
2
日本国憲法に定められた「象徴」としての天皇がどう模索されどう展開していったのか、戦後間もなくから1950年代後半までを論じる。戦後日本の国是と化した「文化平和国家」像の中で「大元帥」から平和を愛好し文化的な天皇というイメージが宮内庁・マスコミ・知識人の三者によって創り出されていく過程は、まさに新国家建設と呼ぶに相応しい。 そして事あるごとに噴出する天皇退位論がかつての重臣や知識人、更には再軍備論者にまで幅広く存在していたのは興味深い。2019/05/11
nagoyan
2
優。占領期の昭和天皇の下での「象徴」天皇の模索と伝統的天皇観(「一君万民」)との連続性。明仁皇太子に投影された平和国家、民主国家、民衆性。その後に来た美智子妃ブームと皇室像の大衆化現象。吉田らによる権威的象徴天皇像は国民に受容されなかった。昭和天皇は、権威的象徴天皇から見事に平和国家の象徴に転身するが、それは戦争の影をもたない明仁皇太子によって完成された。2010/09/29
耳クソ
1
天皇ムズいな。2020/04/08
mk
1
「象徴天皇」誕生の経過を戦後15年というレンジに絞って論じたことで、前半部(昭和天皇退位論)と後半部(皇太子論)の焦点がかなりブレてしまった印象が強く、その点がもったいなかったように思う。個別の論点としては、京都学派による天皇退位論の内実や天皇京大行幸事件の経過がていねいに論じられているだけに、その点がやはり残念。GHQCIE(連合国軍総司令部民間情報教育局)による退位論の展開にクエーカー教徒の思考習慣がそれなりの影響を与えたかもしれない、との指摘はもっと突っ込んでも面白い論点だったかも。2017/02/09