内容説明
清の侵攻を恐れる新興国・大日本帝国。基盤の脆弱なこの国が、いかにして列強の侵略を凌ぎ、さらに覇権国・英国と結んだのか。その同盟戦略はどう機能し、どう破綻したのか。日英同盟から三国同盟まで、戦争と外交にみる帝国の通史。
目次
序章 「同盟」とは何か
第1章 帝国をいかに防衛するか―同盟への萌芽
第2章 清国に勝って列強に屈した―無同盟下の日清戦争
第3章 なぜ日英同盟は成立したか―日英同盟下の日露戦争
第4章 リージョナル・パワーへの第一歩―日英同盟の絶頂期
第5章 なぜ日英同盟は空洞化したか―日英同盟の衰退期
第6章 新グローバル・パワーの出現―第一次世界大戦と日英同盟の危機
第7章 米国が采配するワシントン会議―日英同盟終焉の儀式
第8章 孤立の果ての悪しき同盟―日独伊三国同盟
終章 「同盟」を堅持するためには
著者等紹介
黒野耐[クロノタエル]
1944年愛知県生まれ。防衛大学校機械工学科卒業後、陸上自衛隊入隊。陸上幕僚監部調査部部員、第二特科群長などを経て99年、陸将補で退官。教官として防衛庁防衛研究所入所、04年まで戦史部主任研究官。現在、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部講師。日本国際政治学会評議員
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感想・レビュー
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バルジ
3
日英同盟の関する記述が本書の主軸を為す。日清戦争で同盟国を持たないばかりに列強の干渉により戦略的目標を達成出来なかった日本は、その後グローバルパワーである英国と戦略を共有することで同盟締結に成功、日露戦争に勝利する。しかし「敵」を喪失し日英双方の戦略的利益に齟齬が出てくると同盟は空洞化し始め第一次大戦で決定的になる。自国の利益に執着し同盟国に耳を貸さない日本の独善的な姿勢は英国の不信感を増大させた。「同盟」は何をもって維持されるのか、日米同盟のあり方を考える上で極めて有用な視座を本書は提供してくれる。2019/09/08
ムカルナス
2
日英同盟の成立から終焉までを分析し日米同盟を考える。日本は第一次大戦時に非協力的で西欧が大戦に集中してるのを好機に中国での権益を伸張させようとする。参戦で勝利に貢献した米国に比べ日本は不信感をもたれ日英同盟解消そして第二次大戦敗戦につながる。グローバルパワーとの信頼関係のある連携で後ろ盾を得ることの重要性を説いている。中国がかつての日本のようにリージョナルパワーからグローバルパワーをめざすのなら米国との対決は避けられず、その場合には日米同盟が重要となるとの指摘は的を射ていると思う。2014/10/26