内容説明
ネロ・カリグラ・カラカラ…。世界の頂点に上りつめ、残虐・淫蕩・放埓の果てに破滅した「愚帝」たち。魂の底知れぬ深淵を露呈する愚行にもかかわらず、巨大帝国ローマが揺るがなかったのはなぜか。その秘密に迫る。
目次
プロローグ 死後に裁かれるローマ皇帝
第1章 帝国に君臨するローマ皇帝
第2章 淫蕩帝伝
第3章 放埓帝伝
第4章 残虐帝伝
第5章 愚帝にも揺るがぬローマ―巨大帝国の「小さな政府」
エピローグ 権力に巣くう悪魔の囁き
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中島直人
12
ローマ帝国の6人愚帝の軌跡。抑制された筆致で描かれることで、歴史はスポークスマンによって作られることが良く分かる。ただし、あまり面白く無い。2016/08/15
ジュンジュン
9
「人は苦難を辛抱しても、栄華で堕落する」(タキトゥス)。今回登場する皇帝たちも、生まれながらの悪ではなく、最高権力の魅力、誘惑に負けた愚か者にすぎなかった。もっとも逸脱具合は桁外れだけど。なるほどそれで”愚帝”列伝なのか。トップに愚帝を戴いても揺るがなかった全盛期のローマ帝国。その考察は説得力があった。2020/11/02
バルジ
5
『ローマ帝国衰亡史』でもお馴染みの6人の「愚帝」達の足跡と帝国自体への影響を含め制度面まで言及する。数々の愚かな皇帝達が出現しても崩れないローマ帝国、それは行政権力が極めて脆弱で属州やローマ以外では「皇帝」と庶民の生活があまり関係していないからだ。中華王朝と相似形のこのチープガバメントは愚帝達の亡国から帝国時代を守る「遊び」とも言える。しかし史料的制約があるとはいえ、愚かな皇帝達の所業は想像を絶する。しかし先人達はこの愚かさから現代に連なる民主主義を構築したことも忘れてはならない。アメリカが代表的であろう2025/02/24
Βουλγαροκτόνος
2
キャッチーなタイトルとは裏腹に、1・5章の内容は少々専門的で複雑。斜め読みしたいなら、2〜4章の愚帝列伝本体を読むだけで十分だろう▼留意すべきは、同じエピソードとしか書かれているものでも、出典によって信憑性に大きな差があること。タキトゥスやディオは信頼度が高いが、ヒストリア・アウグスタに至っては物語レベルであることも▼ただし全体としては、出典が原典から英独仏の二次文献まで網羅されており、かなり充実▼また、この本に、イタリアが1871年まで近代的統一国家を作れなかった理由を感じてしまうのは私だけだろうか。2024/04/14
しめおん
2
帝政ローマ前期に現れた6人の愚帝が何をやったのかをそれぞれ見ていく本。権力を手に入れると人間こんな堕落してしまうのか…と驚愕してしまうエピソードの数々だった。しかし、この本の目的はそういった皇帝を批判することでなく、こんなやべー奴らが皇帝になったのに帝国が傾かなかった理由の考察にある。それがなかなか興味深く、古代末期論にも通じる重要なテーマだと感じた。2022/10/19
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- 和書
- 55歳、大人のまんなか