内容説明
時は中世、ヨーロッパ北方をめざす「もう一つの十字軍」があった。教皇の名の下、「異教徒を根絶」すべく残虐の限りを尽くすドイツ騎士団。それを正当化した「思想」とは何か?大殺戮批判が生んだ「人権思想」とは?三世紀に及ぶゲルマン・スラブの相克から「大航海期」までをも展望し、ヨーロッパ拡大の理念とその矛盾を抉りだす。
目次
プロローグ 映画『アレクサンドル・ネフスキー』が語るもの
第1章 フランク帝国とキリスト教
第2章 ヴェンデ十字軍
第3章 リヴォニアからエストニアへ
第4章 ドイツ騎士修道会
第5章 タンネンベルクの戦い
第6章 コンスタンツの論争
エピローグ 「北の十字軍」の終焉とヨーロッパのグローバルな拡大
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
3
カトリック圏である西ヨーロッパが中東に行った侵略である十字軍は、東欧に対しても行われていた。余り知られていない、もう一つの十字軍を紹介している。東方に住むヴェンド人、エストニア人、リトアニア人といった、まつろわぬ異教徒達は、カトリックを背景にした騎士や修道士達によって、執拗な侵略を受けていた。組織的な暴行・略奪とキリスト教徒の殖民、東方は西欧にとって、正にフロンティアだったらしい。異教徒を殺せば天国に行けるという宗教的熱情と、自分達の土地が手に入るという実利がそれに拍車をかけ、全く逡巡も無かった。 2013/09/13
ようはん
2
十字軍といえば第○回十字軍のような中東での対イスラム戦のイメージしか無かったが、中世のある時期まで非キリスト教地域であった現在のバルト三国等における武力を用いた征服活動も含まれているのはこの本で知った。
富士さん
2
再読。初めて読んだ時は侵略と虐殺のエピソードしか記憶に残りませんでした。独ソ戦に至るドイツとスラブの因縁を感じさせてそれはそれで興味深いのですが、本書はむしろコンスタンツ公会議に至る課程、つまりはヨーロッパ人が残虐な蛮族から脱して、世界的な文明人に脱皮するための画期的な一歩がどのようになされたかを描くために構成されていたのです。さすが山内先生、うまい!!。しかも本書を読むと、あくまでもヨーロッパの基軸は20世紀に至るまで、ここで描かれるような野蛮さにあった、ということを確信させてもくれるのです。2016/07/28
KOBAYASHI Masahide
0
「教皇があたえた独占的権利は、あくまで先住民の保護とキリスト教の伝道のためであった」p.2782017/12/03
j1296118
0
切り取り自由の許可と権益を逃してなるものか、とのあからさまな意図を塗り固めるドイツ騎士修道会と、幾ら何でもそこまで主張して当時認められる事は無いだろうという『先駆的』主張を掲げるウラディミリがぶつかるコンスタンツの論争。結局は明確な判定、劇的な結果が出る事は無く、ただ既に致命傷を負っているに等しかった騎士修道会の没落が続く2014/11/11
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