内容説明
遠景に仰ぎ見る垂直の高塔、水平に大陸へ伸びていく鉄道網。すぐれて視覚的な風景の出現は、「国民国家」日本の成立と軌を一にしていた。変容し拡大する「大正」の空間意識を本郷・菊富士ホテルを起点に描き、内向するまなざしの欲望を明るみにだす、気鋭の画期的論考。
目次
第1章 ホテルの記憶
第2章 シンタックスとしての「鉄道」
第3章 1914年・TOKYO
第4章 寝そべる男たち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いかすみ
1
大正時代とはどのような時代だったのだろうか?それは「誰もが普遍的なものに繋がっていることを積極的に志向し、誰もが抽象的な問題を口にする」時代である。それを象徴するのが菊富士ホテルだ。このように均質化された日本は「ネットワークによって緊密に結ばれ、そこを人だけではなく、商品・情報・文化が記号として流通する」。著者によれば、「明治」は「国家」の時代であるのに対し、「大正」は「東京」という都市の時代である。「大正」空間において、外部は「国際化」、「世界」という抽象的空間が志向され、内部は都市空間を細分化する。2024/08/14