内容説明
十七世紀、国際商業都市アムステルダムを中心に美術市場がひらける。大量生産される絵画、次々に生み出されるコピー。芸術が商品となったとき、誇り高き画家レンブラントが工房経営に求めたものは何か…。さまざまな証言と資料から「工房」の実態と時代的意味をあぶり出す。
目次
第1章 虚構のなかの事実
第2章 共生そして競争―レンブラントとリーフェンス
第3章 絵画の栄光とアカデミー
第4章 絵画工場
第5章 絵画市場の誕生
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
3
めちゃくちゃ面白い。レンブラント工房の体制や、17世紀オランダの社会における画家の立ち位置の分析から、「孤高の画家」というレンブラント神話を解体する試み。17世紀オランダの習俗や社会環境に関する記述や、文献資料の読み解き方に好奇心をそそられた。2021/11/30
ik
0
工房と絵画市場というコンテクストからレンブラントの位置づけを再確認(置き直し)し、ルネサンスと近代の価値観の狭間を揺れ動きながら双方を反映するレンブラントという画家像を浮き彫りにする。非常に情報が豊富で時代全体を俯瞰できて面白い一冊でした2011/05/30
志村真幸
0
本書は、レンブラントの工房について新しい見方を提示したもの。レンブラントが工房を構え、多数の弟子たちを使って作品を制作していたことは有名だが、一般に想像される「絵画工房」とはずいぶん違ったものだったのだという。それを同時代の証言、絵画の売り買いの記録、科学的分析の結果などを盛り込みながら、詳細に論じていく。 さらに、この時代のネーデルラントで市民による絵画市場が形成されつつあり、その市場の要求に従って絵画制作も変化していったのだとする。 説得力のある議論であり、おもしろかった。2018/10/09