内容説明
寄生の標的を探すカリヤコマユバチ、葉を食い荒らすアワヨトウ、「タスケテクレー信号」を放つトウモロコシ、卵を守るためにイモムシを去勢するポリドナウイルス…。昆虫と植物、そしてウイルスが引き起こす奇妙な三角関係とはなにか。マクロな自然空間とミクロの寄生体内。二つの世界に拡がる共生の不思議。化学生態学と生理学の気鋭が描きだす驚異の昆虫コスモス。
目次
序章 寄生バチをめぐる三角関係
勾いの遠近法
三すくみの生態系
トウモロコシ上でのさらなる探索
ボディーガードを雇う植物
ハチ―イモムシ、そして共生ウイルス
寄主制御
親と子の絆?
寄主の蛹化粗止とは?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
手押し戦車
8
蜂が宿幼虫の体内に構造が似てる蛋白質の卵を産みつけ同時に蜂の体内でしか増殖することができないポリドナウイルスを侵入させ成長を抑制し体内で卵が孵化する時が訪れ夜行性のはずの宿幼虫が蜂に操られたように昼間に葉の上に行き静止した状態の宿幼虫から百匹あまりの蜂の幼虫が皮膚を破って出てくる間ずっと幼虫は動かない。この時、皮膚が破られてカプセル状の殻を蓋変わりにして体液が出ない様にし宿幼虫に最後の力を残させ自力で移動させ繭の汚染の原因になる宿幼虫の死骸を引き離す。ウイルスと宿主と卵の関係は虫も哺乳類も変わらない2014/07/17
茶幸才斎
4
トウモロコシを餌とするアワヨトウの幼虫は、カリヤコマユバチから体内に卵を産み付けられる。また、カリヤコマユバチに寄生するポリドナウイルスは、カリヤコマユバチの産卵時にアワヨトウの体内に一緒に注入される。本書は、アワヨトウの幼虫を巡るこれら異種生物間の共闘・共生関係を、筆者らの研究成果を中心に紹介している。目に見えない空間に揮発性化合物のシグナル伝達が日夜飛び交っているとか、ゲノム内にウイルスを飼い、宿主の生理作用を撹乱する道具に使うとか、地球で誕生し進化した生物の貪欲でしたたかな生き様の一端が理解できる。2015/02/11
maimai
0
かなり古い本だが、寄生バチが機種をコントロール仕組みについて、実験結果を示しながら丁寧に説明した良書。2020/03/11