内容説明
泣き声がうるさい、そういって両親は1歳のローラをフライパンで焼いた。一命をとりとめた幼子は知的障害児として施設に送られるが、他者への恐怖と絶望から言葉を発することができなかった。12歳のローラが臨床精神科医の著者とめぐりあったとき、運命は新たなる道を辿りはじめた…。幼児虐待社会への痛切な告発であり、人間の誠意と愛の感動の記録でもあるヒューマン・ドキュメントのベストセラー、待望の新訳文庫化。
目次
序章 フライパンで焼かれた赤ん坊
第1章 ことばなき叫び
第2章 愛を知らない子ども
第3章 60人の天使たち
第4章 かすかな兆し
第5章 ローラが話した!
第6章 ことばの世界へ
第7章 父への怒り
第8章 裁く側、裁かれる側
第9章 巣立ちの日
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まあちゃん
30
幼児虐待の犠牲になった彼女の精神は、心の奥深くに隠れ恐怖におののいていた。外部の刺激をぼんやりとしか感じず、12才で言葉も話せない。火傷の痕、斜視、背中は丸まり足はひどい静脈瘤。精神科医の著者は忍耐強く彼女の治療にあたり、奇跡的な回復を遂げさせる。シスターたちの献身にも強く心を打たれる。人の愛情、忍耐、信じる心、助ける手が、少女1人を救い出す。なんて尊い行いだろうか。全米で発行当時ベストセラーになった本書を、皆さんにも読んでみていただきたいと思います。2015/09/10
ハッピースマイル
28
1歳で生きたままフライパンで焼かれるという衝撃的な虐待を受けたローラ。彼女を常に支える修道女たちの献身的な姿はすごいと思う。人は人によって傷つけられてしまうけど、人によって癒されていく…を痛感。今もローラは元気に暮らしているかな。様々な困難はきっとこれからもあるんだろうけど、乗り越えて夢をつかんでほしい。私も頑張ろう。2015/12/22
扉のこちら側
23
再読。2013/08/03
扉のこちら側
20
精神疾患を持つ両親により、生後一歳で生きたままフライパンで火にかけられた少女の再生を描くノンフィクション。被虐待児童への臨床精神科医の介入について現在症例を調べており、参考資料として読了。著者である精神科医師自身もスラム街の出身で、学力不振から知的障がいと判断され幼少期は特殊学級に通っていたという。私がこの著者の立場であったら、どう介入していくかと考えさせられると共に、少ないながらもこれまで私が関わってきた被虐待児童達の過去と現在、そして未来について、思いを馳せることとなった。2012/06/29
キムチ
13
再読。精神疾患一連の本や幼児虐待関連の本を読んでいた時に初めて手にする。だが、我ながら安っぽいヒューマニズムで読み進められなかった・・辛すぎて、凄絶で。筆者自体、スラム出身でいわばのし上がっての医師。文中でも感じるが結構の野心家であり、「フツーの人」だからこそ、ローラを最初に救い、この医師に手渡すまでの修道女たちとは一線を画し、そのつぶやきにも共感が持てた。 ローラは生きながら焼かれたことで、心まで焼かれ全く言葉を発することが出来ないで12歳まで過ごした・・というか生を長らえた。