出版社内容情報
2015年の逝去が惜しまれるフジモトマサルの名作長編漫画、待望の新装復刊。ある日気づくと日菜子は鳥たちの世界に暮らしていた…心が不思議に癒やされる。生活とは? 自分の時間とは? 生と死とは? ふっといろいろなことを考えさせる、静かで豊かな時間の物語です。
フジモトマサルの長編漫画『二週間の休暇』(2007年)を、愛蔵版のハードカバーとして新装復刊。巻末には、穂村弘氏による解説と刊行時話題になった著者作の「給水塔占い」を増補収録。
フジモト マサル[フジモト マサル]
著・文・その他
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
130
何もかも忘れてゆっくり休みたい。猫は死ぬときに姿を消すというけれど、その猫を殺すのは好奇心である。旅立つ猫に誘われて、やってきたのは、記憶のなかにある異世界。お散歩、読書、お料理、コロッケ。飛べない鳥たちと過ごす非日常は、日常的な幸福に彩られている。それは十五少年たちの「二年間の休暇」ほど、長くも過酷でもないけれど、理想的な暮らしは冒険に充ちて夢のよう。いやほんとうに夢だったのか。空を飛べるか否かは、技術ではなく気持ちの問題。詩情さえあれば鳥もあなたも、わたしだって空を羽ばたいてゆける。2017/12/17
seacalf
75
この人の『聖なる怠け者の冒険』の挿画が好きだったんだよな~。なんとも味のある不思議な雰囲気を醸し出す画風のフジモトマサル氏。知らない間に鳥だらけの、でもほっとするようなおかしな世界へ迷い混んだ女性のストーリー。起きた途端に忘れてしまう夢の世界に紛れ込んだような、時間がゆっくり流れているような感覚に陥る。なぜ鳥なのかという疑問はのちのち明かされるのでスッキリ、そしてほろり。巻末の給水塔占いも意外性があって楽しませてくれる。自分は堅牢ドーム型との事。ふむふむ。2020/02/19
ユメ
58
新装版が出たことでこの作品と出会うことができ、ありがたい。気が付いたら鳥たちの世界で暮らしていた日菜子。この世界が細部までこだわって描き込まれていて、そのディテールに惹かれる。二ライ書房に並ぶ本の数々、日菜子が口ずさむ歌。一種の理想郷のようにも思える世界だが、日菜子が過去のことを思い出せないというあやうさがどきどきさせる。そんなときでも美味しい焼き茄子、レモネード、コロッケといった食べ物がリアルに浮かびあがる。読後は、二週間の休暇を終えた日菜子のように、どこか清々しい気分。給水塔占いは砂漠鉄塔型だった。2016/05/31
キジネコ
47
不思議な話が大好きです。んな馬鹿な…と云わず、隣合わせの異界からの誘いに然も在りなんと面白がりました。日常に少し疲れた女子に鳥の世界への御誘いを携えて烏が二羽訊ねてきます。非日常を冒険というには余りに穏やかな休暇が彼女の忘却から始まります。其処は飛ぶ必要のなくなった鳥達の世界でした。慣れ親しんだ状況に不図感じる疑問、それが降り積もる澱の様な静かな息苦しさと溜息を齎す時…私達へも隣の異界からの招待が届くかも知れません。飛ぶこと、謳歌した自由に回帰せよと囁く異端者が存在するのは彼此ともに同じ様相ですね。2021/06/24
小太郎
43
好きなイラストレーターで訃報を聞いた時には驚きました。でももう8年も経つんだ、まだ随分若かったのに今思っても残念です。この本は再読。「ダンスがすんだ」あたりから気になっていて、色々な本の装画などもとても素敵でした。独特の雰囲気を持つ作家さんでした。この本は「終列車ならとっくに行ってしまった」と一緒にしまってあったのを見つけました。読んでいてこういう気持ちにさせてくれる本は、この頃あまりないな~と思いながら少し懐かしかったです。★42023/07/25