プルートピア―原子力村が生みだす悲劇の連鎖

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  • サイズ B6判/ページ数 508p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062199995
  • NDC分類 539.45
  • Cコード C0098

出版社内容情報

チェルノブイリ、福島――繰り返される悲劇の原点はこの歪んだ理想郷にあった! 米ソの隔絶された「原子力村」の起源を辿る。“プルートピア”は、アメリカとソ連が、第二次世界大戦後の社会の欲望を満たすためにつくりあげた、「特異なユートピア」である。そのいびつな理想郷は、国家の秘密プロジェクトであり、核兵器製造の“原子力村”でもあった。アメリカはワシントン州東部のリッチランドに、ロシアはウラル山脈南部のオジョルスクに、プルトニウムの街としての“プルートピア”をつくりだした。リッチランドのハンフォードとオジョルスクのマヤークには、それぞれにそっくりの核製造施設があり、“プルートピア”という酷似した凄惨な経験が、チェルノブイリと福島の悲劇の前に存在したのだ。
本書は、国境を越えた軍拡競争の歴史を、核爆弾製造にかかわった人々の暮らしや土地と結びつけて考察し、東西冷戦という境界を越えてプルトニウムが米ソを結びつけプルートピアを生みだした経緯に注目する。核爆弾製造現場で働き、被曝者となった二つの地域に暮らす人々によって語られた驚愕の事実の数々――。インタビューと膨大な公文書記録をもとに徹底追跡する著者は、チェルノブイリ、福島と繰り返されてきた惨劇の源泉を掘り下げることに成功した。

はじめに    
第1部 アメリカ西部の核最前線――閉ざされた空間
1 ミスター・マサイアス、ワシントン州に行く 
2 逃げ去る労働力    
3 “ハンフォードの奇跡”という嘘
4 先住民とマサイアス
5 プラトニウムがつくった街    
6 放射線にさらされる女性たち      
7 危険すぎたマンハッタン計画
8 食物連鎖    
9 ハエ、マウス、そして人間    
第2部 ソ連の労働者階級の原子力
10 発禁処分
11 グラークと爆弾    
12 青銅器時代の原子力  
13 機密保持    
14 ベリヤの来訪  
15 義務のための報告    
16 惨禍の帝国    
17 永続的な戦争経済を追う“いい男たち”   
18 スターリンのロケット・エンジン
19 リッチランドの独裁者    
20 近隣の人々    
21 ウォッカ社会 
第3部 プラトニウムの惨事
22 危機管理をする 
23 傷つきながら歩く  
24 二度の検視   
25 ワルーク丘陵地
26 テカ川の静かな流れ
27 再入植    
28 免責地帯   
29 社会主義的消費者の共和国  
30 開かれた社会の使い道   
31 キシュチムの爆発、一九五七年
32 汚染された村に生きる
33 私的な部分 
34 地図にない特別な街
第4部 プルトニウムのカーテンを取り去る    
35 プルトニウムをポートフォリオの株式に
36 帰ってきたチェルノブイリ
37 一九八四年    
38 見捨てられた人々   
39 甲状腺不全    
40 非公式な代弁者 
41 核の情報公開   
42 すべての王の「家臣」
43 未来


ケイト・ブラウン[ケイト ブラウン]
著・文・その他

高山 祥子[タカヤマ ショウコ]
翻訳

内容説明

“プルートピア”は「特異なユートピア」である。アメリカはワシントン州東部のリッチランドに、ロシアはウラル山脈南部のオジョルスクに、プルトニウムの街・原子力村としての“プルートピア”をつくりだした。本書は、東西冷戦という境界を越え、プルトニウムが米ソを結びつけて「歪んだ理想郷」を生みだした経緯に注目する。インタビューと膨大な公文書記録をもとに、チェルノブイリ、福島と繰り返されてきた惨劇の源泉を掘り下げる。

目次

第1部 アメリカ西部の核最前線―閉ざされた空間(ミスター・マサイアス、ワシントン州に行く;逃げ去る労働力 ほか)
第2部 ソ連の労働者階級の原子力(発禁処分;グラークと爆弾 ほか)
第3部 プルトニウムの惨事(危機管理をする;傷つきながら歩く ほか)
第4部 プルトニウムのカーテンを取り去る(プルトニウムをポートフォリオの株式に;帰ってきたチェルノブイリ ほか)

著者等紹介

ブラウン,ケイト[ブラウン,ケイト] [Brown,Kate]
メリーランド州立大学の歴史学の教授。2005年に、『A Biography of No Place:From Ethnic Borderland to Soviet Heartland』を発表。ポーランド人、ドイツ人、ユダヤ人、ウクライナ人、ロシア人が混在して住んでいたロシアとポーランドの国境地帯の、1925年からの30年間の変遷を描き、優れた歴史書に贈られるアメリカ歴史学協会“ジョージ・ルイス・ビア”賞を受賞した。“タイムズ・リテラリー・サプルメント”“アメリカン・ヒストリカル・レビュー”“クロニクル・オブ・ハイヤー・エデュケーション”“ハーパーズ・マガジン・オンライン”などに寄稿

高山祥子[タカヤマショウコ]
1960年、東京都生まれ。成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

更紗蝦

12
アメリカのハンフォードと旧ソ連のマヤークのプルトニウム工場を比較した本です。安定した操業・労働者の確実な確保・秘密保持を追究した結果、両方とも核家族によって構成された閉鎖的で生活水準が高い都市に成長し、一見、裕福で文化的な生活を送っているように見えて、その実、日常的な放射性廃棄物の投棄と被曝のリスクを過小評価した杜撰な防護体制と過酷事故によって、住民が2世代、3世代に渡って健康被害に苦しんでいる実態を淡々と記しています。原爆が製造段階で既に被曝者を出していたことを指摘している所には、ハッとさせられます。2017/05/12

takao

2
ふむ2024/11/16

K

1
アメリカとソ連で、プルトニウム工場のために人為的に造られた街で、選ばれてそこに住まわされた人々も、知らずに被曝を強いられた周辺住民も、放射能による健康被害を受けている様を比較しながら描く。ゆっくりと健康を損なわれ、当事者であるにもかかわらず真実は知らされず、訴えを起こす手段さえ奪われる人々は、冷戦時代に反目しあった両国の原子力ムラの共通点だったという皮肉さ。目が本来あるべきでない位置についてしまった胎児の写真があまりに衝撃的で言葉を失った。2017/05/30

モカちゃん

0
日本も同じかも。2019/08/31

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