惑星の岸辺

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  • サイズ B6判/ページ数 306p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062197182
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

宇宙飛行士の甘南備は低温睡眠状態から目覚め、60年ぶりに地球に帰還を果たす。彼を憶えているものは誰もいないはずだったが……。

宇宙飛行士の甘南備俊介は、五十八年九か月の眠りから目覚めた。木星衛星調査船で低温睡眠に入っているとき、太陽フレアの爆発で船が軌道を逸脱したのだ。地球の周回に入ってから回収され、たったひとり帰還した彼は、いちやく英雄となった。
甘南備を待ち受けていたのは、国際宇宙開発機構が精密に組み上げた回復訓練プログラムで、橘ムラサキという若い専任医務官が担当することになった。橘自身がかつて事故に遭い、このプログラムの経験者であった。
訓練が始まって、甘南備は不思議なことに気づく。橘のふとした仕草が、25年前に亡くなったはずの妻の葵のそれと重なるのだ。彼は次第に訓練の時間を心待ちにするようになるが……。
時空を超え、記憶という愛は甦るのか。大人の心を揺さぶる、ミステリロマン。

【著者紹介】
(かじむら・けいじ)
2011年、『野いばら』で第3回日経小説大賞受賞。他の著書に『「東京物語」と小津安二郎』、『使者と果実』がある。

内容説明

宇宙飛行士・甘南備俊介は、木星衛星探査船でのミッション中、太陽面爆発による事故に遭遇する。事故時に人工冬眠に入っていたため、58年9ヵ月後に奇跡的に救出され、地球に生還した。姿かたちは出発時の33歳のままだが、記憶は断片的にしかなく、愛する妻・葵はすでに他界していた。担当医務官、橘ムラサキが彼の復帰を助けるが、訓練が進むうち、甘南備は橘の不思議な挙動に気付く。彼女はいったい何者なのか―。

著者等紹介

梶村啓二[カジムラケイジ]
2011年、『野いばら』で第三回日経小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

chimako

88
とても良かった。美しい日本語と美しい描写。SFのテイストを織り込んだラブストーリーは日本の美しい四季とそこにある自然をあらためて読み手に教えてくれるようだった。主人公はコールドスリープの果てに60年後の地球に帰った宇宙飛行士甘南備。脇を固めるのは担当医師ムラサキ。甘南備の友人醍醐。ムラサキの幼なじみ葛城。そして、甘南備のかつての妻葵。60年を経た地球上にはすでに自分を知る者は誰もいない。その足元が抜けてしまったような不安定さと不安。そして何物にも期限があると言う現実。再生と希望。良い物語を読みました。2020/11/09

のんき

86
宇宙飛行士の俊介は、宇宙船で事故にあいます。奇跡的に帰還して、五十八年ぶりに眠りから覚めました。橘ムラサキという女性医務官と回復訓練をします。ムラサキの態度や仕草に、25年前に亡くなった妻の葵を思い出します。ムラサキ(葵)と二人で行ったアルプスの景色がキラキラ美しく表現されていいな。ここで、二人で一緒に経験したことを俊介も葵も、はっきりと思い出します。大好きな人同士で、一緒に経験した楽しいこと、感動したこと、愛しあったこと、幸せなことは、絶対忘れないんだなあ。大切な思い出は、いつまでもずっと忘れたくないな2020/11/23

みっちゃん

79
自分はずっとこういう本が読みたかったんだ、と思った。59年もの人工冬眠から目覚め、33才の姿形で地球に帰還した宇宙飛行士。14年前に75才で死んだはずの妻と不思議な再会をする。妻の再生を願う男と、それを何とか阻止して恋人を取り戻そうとする男。愛する女の復活を願う哀しいオルペウスたちよ。人間はどうしようもなく弱くて悲しい存在なのかもしれない。でも、共に生きる時間は消え去っても、その記憶は消える事はない。それはずっとそこにある。2015/12/08

雪月花

57
自分のことを知る人がほぼいない60年後に突然放り出されたら、一体何を頼りに生きていけば良いのだろうか?過去の記憶しか頼りにならないのだろうか?低温睡眠装置で約60年間宇宙を漂っていた宇宙飛行士が奇跡的に帰還した。60年前の自分を知る者は一人を除いて皆無という宇宙版浦島太郎かと思いきや、流麗な文体で壮大な世界観が拡がっていく。「記憶」がキーワードとなり、SF、ミステリー、ラブロマンスの要素に終始静謐な雰囲気も相まって、すっかり魅了された。映画化されたら素敵だろうな。2022/01/08

まさ

30
梶村啓二さん初読み。なんて静かな文章を紡ぐ方なのでしょう。記憶を辿り、蘇り、そして結びつき消えていく。淡く静かなのに広く深く、変化もしていく。そこで生を感じる。余韻も嚙みしめたい物語でした。2022/05/08

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