「家栽の人」から君への遺言―佐世保高一同級生殺害事件と少年法

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「家栽の人」から君への遺言―佐世保高一同級生殺害事件と少年法

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  • サイズ B6判/ページ数 268p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062196949
  • NDC分類 327.8
  • Cコード C0095

出版社内容情報

大ヒットコミック『家栽の人』の原作者だからこそ書けた、佐世保高一同級生殺害事件と更生の現実。少年法を考えるための一冊。ヒット作『家栽の人』で一躍人気マンガ原作者となりながら、著者は、その成功を素直に喜べない自分に出会う。現実離れした人物像を『家栽の人』の主人公にしてしまったことに苦しみ、戦後の裁判所のねじれた歴史に巻きこまれた思いを強めていたからである。矛盾の多い法曹界の戦後史を追跡し、中津少年学院で篤志面接委員となり、宮本常一の仕事を追いかけ“忘れられた日本”の風景を歩むなかで、司法現場と世間の感覚とのズレを実感するようになった著者が突き当たったのが、戦後の少年法が抱える問題である。
第一部「少年法をめぐる戦後」では、少年法の成り立ちと戦後社会との関係を検証するとともに、神戸児童連続殺傷事件や光市母子殺害事件の現場のフィールドワークをおこない、非行少年の更生に携わり大きな実績を挙げる野口義弘・藤岡克義両氏への取材を敢行することで、戦後少年法が孕む本質的な問題をわかりやすく、かつ鋭く抉り出す。
少年法への無知、無理解が、ピント外れの「少年法叩き」を生む日本社会の現状を嘆く著者に、二〇一四年夏、末期の食道がんが見つかる。すでに肝臓、リンパ節、肺にも転移していた。佐世保高一同級生殺害事件が起きたのは自身のがんを知った直後である。がんにおかされた病床で著者は生と死を見つめ直し、「佐世保の君」に贈る最期の言葉を紡ぎ始める。事件の背景、少女が犯した罪への考察は、物語で「少年の心の痛みを書く」ことこそミッション――『家栽の人』執筆は運命――だった自身への気づきとも重なっていく……。少女への問いかけを通し本当の更生とは何かを考え、人が生きて在ることの根拠を見つめる(第二部「佐世保の君への手紙」)。

第一部 原作者が迷い込んだ少年法の戦後史
第一章 家栽の人をふりかえる
第二章 少年法叩きの一五年を考える
第三章 少年院の世界
第四章 非行少年100人を雇った男 
 (株)野口石油会長・野口義弘(福岡県北九州市)
第五章 少年鑑別所からの大学進学、請け負います 
 学習塾フジゼミ社長・藤岡克義(広島県福山市)
第二部 佐世保の君に贈る手紙
第六章 第一信 忙しすぎる夏
第七章 第二信 最高裁に乗り込む
第八章 第三信 ぼくが思春期に出会った死
第九章 第四信 維摩詰の足元で


毛利 甚八[モウリ ジンパチ]
著・文・その他

内容説明

無知、無理解が、ピント外れの「少年法叩き」を生む日本社会を嘆く著者を、末期がんが襲う。病床で著者は生と死を見つめ直し、佐世保高一同級生殺害事件の加害者少女に贈る最期の言葉を紡ぎ始めた…。大ヒットコミック『家栽の人』の原作者だからこそ書けた、少年法を考えるための一冊。

目次

第1部 原作者が迷い込んだ少年法の戦後史(『家栽の人』をふりかえる;少年法叩きの一五年を考える;少年院の世界;非行少年一〇〇人を雇った男―(株)野口石油会長・野口義弘
少年鑑別所からの大学進学、請け負います―学習塾フジゼミ社長・藤岡克義)
第2部 佐世保の君に贈る手紙(忙しすぎる夏―佐世保の君に贈る手紙 第一信;最高裁に乗り込む―佐世保の君に贈る手紙 第二信;ぼくが思春期に出会った死―佐世保の君に贈る手紙 第三信;維摩詰の足元で―佐世保の君に贈る手紙 最後の手紙)

著者等紹介

毛利甚八[モウリジンパチ]
1958年長崎県佐世保市生まれ。日本大学芸術学部文芸学科を卒業後、ライターとして活動。1987年より漫画『家栽の人』(画・魚戸おさむ、小学館)の原作を担当する。1994年より1998年にかけて民俗学者・宮本常一の足跡を追う旅を行い、『宮本常一を歩く』(上・下、小学館)を上梓。2001年より大分県に住まいを移し、地元の少年院で月に1回ウクレレを教えている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

109
「家栽の人」を書かれた毛利甚八さんのノンフィクションです。前半はご自分の経歴からこのコミックを書かれるようになった経緯、中盤は非行少年・少女を雇ったり大学進学のための塾をしている人の話、最後は佐世保の殺人事件について少年法と自身ガンになっても少年たちのための活動を行っているさまが書かれています。コミックは読み直し中ですが、「宮本常一を歩く」を読んでみたいと感じました。2017/12/09

Y2K☮

46
あとがきで本人も認めているが、被害者の遺族への配慮が弱い。加害者にも考慮すべき事情があると思うし、実名が晒される事への警鐘も分かる。でもそれを云うなら被害者やその家族のプライバシーはどうなるのか。全体的に感情が先走り、論調も偏り気味。体調的にこれが精一杯だったのかな。でも安易に厳罰化を唱えがちな少年法への提言は筆が鋭く、刑事裁判と少年審判の根本的な違いや裁判所の旧態依然とした体質なども勉強になった。非行少年の更生の為に彼らを雇い続ける野口氏や藤岡氏には頭が下がる。「家栽の人」もう一度書いて欲しかったです。2015/12/30

しいたけ

39
「家栽の人」の原作者毛利さんは少年院の篤志面接委員をされていたのだそう。この本で無知・無理解による「少年法叩き」に対して警鐘を鳴らしている。刑務所のような単なる時間刑より、少年院のほうが余程きついと言う。後半、癌で余命わずかと知った著者から、佐世保事件の加害少女に向けた語りかけになっている。加害児童をケアする仕事をしてきた人間として、是非読んで頂きたいと思う。加害者の心の闇に寄り添うことは、決して加害者を甘やかすものではない。被害者を冒涜することにもならない。闇を見つめ解き明かそうとする強さを持ちたい。2015/12/20

さなごん

28
読み友さんの感想から、読んでみたかった本。「家栽の人」は読んだことないので、?なところもあったけど特に野口さんと藤岡さんの話はすごかったな。あと、少年院の篤志面接のエピソードもよかった。2016/04/16

R

25
漫画原作者としての裏話も交えつつ、少年法のあり方について考えたことと、佐世保の事件に対する著者からのメッセージが編まれた本でした。前半の、漫画原作者として悩んだギャップの話が面白く読めました。こうやって漫画の方向性が変わるのか。著者がこれをきっかけに少年法について考えて、少年院に講座をもつなどのルポも興味深く、考えさせられる内容でした。終盤は、著者が癌を患い死期が迫り、拙速に持論を展開し、佐世保事件に対するメッセージを綴っていましたが、もう少し練った形で発表したかっただろうなと感じました。2016/10/31

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