ハロルド・フライを待ちながら―クウィーニー・ヘネシーの愛の歌

ジョイス，レイチェル【著】〈Ｊｏｙｃｅ，Ｒａｃｈｅｌ〉/亀井 よし子【訳】

講談社（2016/05発売）

• サイズ B6判／ページ数 445p／高さ 19cm
• 商品コード 9784062196871
• NDC分類 933
• Cコード C0097

出版社内容情報

本屋大賞（翻訳小説部門）第２位になった『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』の姉妹編。もう一つの想像を絶する物語！ハロルド・フライがイギリスの端から端まで歩いて会いにくると知ったクウィーニー・ヘネシーはショックを受ける。手紙には、もう何日も生きられないと書いたはず。動揺するクウィーニーに、ホスピスのシスターがもう一度彼に手紙を書くことを勧める。ただし今回はハロルドにすべてを打ち明けねばならない。キングズブリッジを逃げ出して20年、その間ずっと隠しつづけてきた秘密を打ち明けることが過去を償うことになる・・・・・

レイチェル・ジョイス［レイチェル ジョイス］
著・文・その他

亀井 よし子［カメイ ヨシコ］
翻訳

内容説明

定年退職したその男ハロルド６５歳は、むかし同僚だったひとりの女性を見舞うために、１０００キロの道を歩き始めた。彼女は末期がんでホスピスにいたが、ハロルド自身知らない、彼の生涯の秘密をすべて知っていたのだった！２０１４年本屋大賞翻訳小説部門２位！

著者等紹介

ジョイス，レイチェル［ジョイス，レイチェル］ ［Ｊｏｙｃｅ，Ｒａｃｈｅｌ］
テレビ、ラジオ、演劇などの分野で２０年にわたり脚本家として活躍。２０１２年に初の小説『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』が刊行されるやいなやマン・ブッカー賞候補にノミネート。同年Ｎａｔｉｏｎａｌ　Ｂｏｏｋ　Ａｗａｒｄｓにより「今年最も期待される新人作家」に選ばれる。イギリスのグロスターシャーで暮らす

亀井よし子［カメイヨシコ］
英米文学翻訳家（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[けい]

「巡礼の旅」においてはイギリスをじっくりと歩きながら、ハロルドフライの人生を顧みていったのですが、今作はハロルド・フライが歩くきっかけを作った元同僚の女性クウィーニーを描きます。ハロルドとは対照的に、速い速度でイギリス国内を移動し続けた彼女。様々な胸の内をハロルドに対して隠し、死を目の前にした彼女が彼に対して明かす真実とは？「人生五十年～」最後の時を意識する年齢となり、彼女の思いを通じて、様々な事柄を考えさせられました。幸い私自身は、彼女の様に大きな秘密をは持っていないんですが。

2016/06/15

[つちのこ]

清々しい読後感を味わえた。前作「ハロルド・フライの～巡礼の旅」の姉妹編。コインの裏表のごとく、完成された物語はどちらから先に読んでも飽きさせない。ハロルドへの思いが強すぎるので、クウィーニーの偏った怖さも感じたが、プラトニックな愛となれば話は別。ハロルド・フライがなぜ歩き続けるのか？歩く必要がどこにあるのか？前作ではそればかりを考えていたが、この長い物語を完成に導くためには、もつれた糸をほぐす長い時間が必要だったのかもしれない。互いに引き寄せられる磁石のように、二人の長い旅が見事に弧を描き、クロスした。

2024/03/11

[マッピー]

私は死を感動のタネとする作品が好きではない。この作品（前作も）は、末期がんの患者を１０００キロも離れたところから歩いて見舞いに行くという時点で現実的ではなく、設定のあざとさが鼻につく。１０００キロ先から、何としてでも会いたいのなら、交通機関を使え！とハロルド・フライには言いたい。そしてクウィーニー・ヘネシー。残された時間が少ないのに、無駄な描写が多すぎる。クウィーニー・ヘネシーがなぜ生涯の最後に手紙を書くことにしたのかは、キリスト教徒として救われたかったということなのでしょうか。

2020/08/23

[daimonn]

“思いもよらない巡礼の旅”はあの一冊で十分完成された素晴らしい作品だったけど、本作を読んだ今では、二冊合わせて完璧な物語となった感がある。ハロルドを待つ間はクウィーニーにとっては過去への巡礼の旅。彼女の人生は決して孤独だけを共にしたわけではなかった。海の庭は彼女の誠実さや豊かな愛情を思わせる。治らない病気になったこと、最後まで彼女の庭にとどまれなかったのは残念だけれど、過去を赦され、魂は安らぎを得て、まるで祝福を受けているかのような最後を迎えられてよかった。そんな終え方は見送る人たちの心も慰める。

2017/01/12

[Ra]

前作を読んだときは、完全な友情であり恋愛感情は無いと思いたかった。しかしクウィーニーは恋をしていた。命も、恋心も、あまりに儚い。

2019/04/28