出版社内容情報
読む禅修行。『法然の涙』に続く仏教小説第二弾。破戒を尽くすことで乱世に生きる道を見出した一休が出会った45歳下の女とは? 室町時代に登場した一休禅師(1394?1481)は「頓智の一休さん」として子供にも知られていますが、彼の実像は、そんな「愉快なお坊さん」からほど遠いものでした。
北朝最後の天皇・後小松帝の落胤として生まれ、南朝出身の母と嵯峨野の民家で息を潜めて暮らします。6歳で身の安全のために出家させられますが、一度は自殺を試みます。近江の堅田にいた華叟(かそう)という厳しい禅師に出会い、年老いた師に献身的に仕えます。しかし、華叟が亡くなると一転「風狂の人」となり、堺に移って放蕩のかぎりを尽くします。
当時の禅宗は室町幕府の庇護を受け、僧侶が漢詩の巧拙を競いあう貴族的なサロンと化していました。一休は虚構に満ちた仏教界に嫌悪を抱き、足利義政と日野富子の幕政を批判します。常識に囚われない自由滑脱の禅の神髄を身をもって示そうと、あえて肉と魚を喰らい、酒をあおり、男色を貪り、遊郭に出入りし、町の娘に子供を産ませたりしました。破戒のかぎりを尽くしましたが、晩年10年間は「森女」という40歳以上も若い盲目の女芸人と同棲しました。
本書は、この森女と一休の物語が中心となります。
森女と出会ってからの一休は、それまでの権威を敵視するような過激さが消え、優しさを見せます。80歳で大徳寺(臨済宗大本山)の住職となり、乱で焼けた伽藍を復興します。森女との交情のうちに人の道を見出し、真に無我無欲の境地を味わったのです。
「仏界入りやすく、魔界入りがたし」という一休の言葉があります。型通りの修行をして得る悟りなど使い物にならず、己のうちに潜む魔性に触れた時こそ、本物の悟りが開けてくる。自らの体験からそう理解したのです。そして、応仁の乱後の日本人の精神を復興し、文化人としても能、茶の湯、俳句の原型を創造するという偉業をなしました。大陸由来ではない、自然と一体となった日本独自の文化は、一休から始まるのです。
一休の魅力は人生と思想が一致し、その生涯を知るほどに味わいが深くなる点。天皇・庶民どちらとも親しく交流し、悪を憎まず偽善を憎み、戦乱の世にひと筋の光を示した一休の愛を描きます。
第一章 傷ついた魂
第二章 禅門の学び
第三章 仏界入り易し
第四章 聖胎長養の日々
第五章 逆行三昧
第六章 盲女琵琶
第七章 魔界入り難し
町田 宗鳳[マチダ ソウホウ]
著・文・その他
内容説明
七十七歳の純愛―帝の子に生まれながら幼くして出家。三十三で大悟の後も心中に得体の知れぬ悲哀を抱え、あえて逆行三昧に耽る。晩年、盲目の女琵琶師との邂逅により、ついに安心立命の境地を見いだす。
著者等紹介
町田宗鳳[マチダソウホウ]
1950年、京都に生まれる。中学2年の14歳で出家。以来20年間を臨済宗大本山大徳寺で修行。34歳で渡米し、ハーバード大学神学部で神学修士号、ペンシルバニア大学東洋学部で法然研究により博士号を取得。プリンストン大学東洋学部助教授、国立シンガポール大学日本研究学科准教授、東京外国語大学教授を経て、広島大学大学院総合科学研究科教授。国際教養大学客員教授、広島大学環境平和学プロジェクト研究センター長、早稲田大学国際言語文化研究所招聘研究員、日本宗教学会評議員などを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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