出版社内容情報
沖縄の小島で起きた悲劇と予想外の結末! 平和への祈念をミステリー的手法で見事に小説化した、戦後70年にふさわしい隠れた傑作。1945年、1958年、2011年の3つの物語をつなぐ、沖縄の小島で起きたある出来事。ありがちな甘い人間ドラマとも読めるパート1から、ものの見事に跳躍する物語の力と予想外の結末! あの日あの島の洞窟で本当は何が起きたのか? 13年後に発見された3体の遺骨はいったい誰のものなのか? そして、受け継がれる命脈ともいえる存在が目の前に現れる・・・。過去と現在をつなぐ戦後70年に登場した戦争小説の傑作!
ロジャー・パルバース[ロジャー パルバース]
著・文・その他
内容説明
1945年と現代をつなぐ平和への祈念―太平洋戦争末期、沖縄南方の小島で起きた悲劇と、その予想外の結末!
著者等紹介
パルバース,ロジャー[パルバース,ロジャー] [Pulvers,Roger]
1944年アメリカ生まれ。作家・劇作家・演出家。ハーバード大学大学院ロシア地域研究所で修士号を取得。ポーランド、フランスへの留学後、1967年よりほぼ半世紀を日本で過ごし、大島渚監督作品『戦場のメリークリスマス』の助監督などを経て執筆活動を開始。宮沢賢治の作品の英語翻訳にも数多く携わり、その功績から第十八回宮沢賢治賞(2008年)、第十九回野間文芸翻訳賞(2013年)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
も
44
昭和20年4月、沖縄の鳩間島に住む梅野洋海という16歳の少女が海岸近くの洞窟で日米の脱走兵と出会う。「戦争中、どの空も、どの風景も、どの花も野原も海も、希望をもたらすほどは美しくない。…希望と「祈り」はわたしの敵だ。」こんなに悲しいことってあるでしょうか。戦時中の話ですが、ひととひとが殺し合うような場面はありません。ただただ静かに残酷な時を語る物語でした。2015/08/14
びすけっと
12
2015年3月刊。初出 文學界。新聞書評つながり。母国語が日本語ではない著者の筆致にとても驚きました。激戦地ではなくとも、やはり戦争の地。逃れた「ふたり」とふたつの「邦」をもつ女性が作り出した日々は凪のような優しさにも包まれていました。物資調達役として、通訳として、身を隠しながら参じた日々は彼女にとって人生でとても長い日々だったろうと思います。物語に綴らなければならないほどに。思わぬ後日談がそれを表しているように感じました。2015/05/14
ぶっちゃん
6
こんな綺麗な物語が出ていたなんて。それもアメリカ人が書いた、沖縄戦。 小さな小さな島で起きた物語。 帯に名前を連ねる方たちを見て、間違いない!と思ったけど。やっぱり間違いなかった。 アメリカ人・日本人・そして沖縄人。みんな人なのだ。 こうじゃなきゃいけないのだ。 なのに、『ヘイワなんてないんだ。あるのは、「戦後」と「今度の戦争」の間に挟まれている冷たい小康状態だ』の一文が痛い。 少女から少女へ託された、そのヘイワへの想い。星砂。2016/04/15
冬薔薇
6
昭和20年4月、沖縄の鳩間島で星砂をビンに詰めるヒロミは洞窟で日米二人の脱走兵に出会った。「わたしの人生は、わたしの家族はこの戦争の手で、真二つに引き裂かれている」、「ヘイワなんてない、あるのは’戦後’と’今度の戦争’の間にはさまれている冷たい小康状態」。戦争を生き抜いた少女の形見は66年後の現代に奇跡の出会いをもたらす。こんな静かな戦争小説があったのかと心揺さぶられる。星の数ほどある語り継ぐべき戦争の傷跡。2015/07/15
ホン
6
題名からして美しいストーリーなんだろうと勝手な先入観を抱き読んでみたがその通り、日米それぞれの脱走兵に16歳の少女「洋海」(ひろみ)の3人を中心に描いた終戦前の沖縄の離れ小島でのお話。敵どうし お互いの人格を認めあいながらの平和な日々、戦争が終わればお互い友達になろうと言いながらそこまで生かせてくれなかった。最後 西暦2011年 洋海(ひろみ)の再度の登場、映画「タイタニック」の冒頭の老女の回想するシーンを思い出した。アメリカ人作家による翻訳なしの物語だが文章も綺麗。2015/06/26