出版社内容情報
亡くなって17年。小さくなった母がテレビの脇に立っていた。母の死と、かつての家族の姿を綴る、乾いた叙情あふれるふたつの佳篇。
不意に現れた亡き母とのとりとめのない会話。「お父さんもあたしも若くて、一生懸命生きてた。一生懸命生きないと楽しくないからね。もう一回生きたいな、四人であの頃を」。母の死とかつての家族の姿を綴る、表題作ほか「日記と周辺」を収録。
内容説明
母が逝って十七年。思い出は一つずつ色を増してゆく。「お父さんもあたしも若くて、一生懸命生きてた。一生懸命生きないと楽しくないからね。もう一回生きたいな、四人であの頃を」不意に現れた母とのとりとめのない会話。私の知らない記憶をあつめて、過去の時間がつくられる。母をめぐる二つの佳篇。
著者等紹介
川崎徹[カワサキトオル]
1948年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。CMディレクターとして多くのヒットCMを手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樽
5
KindleUnlimited 思ってたよりゴリゴリの私小説だった。私自身、母を送って3年、いろんなことが後悔に塗り込められていて、まだ普通に読めない。何年後かにまた読もう。2022/11/27
毅
3
心に染みました。 書評家の豊崎由美さんがTwitter文学賞でこの本に投票していたのも納得です。 もっと読まれるべき本だと思うな。2013/07/11
マックス
2
★★☆☆☆「最も古い視覚的記憶」とは?幼児期健忘を過ぎ自分の記憶を辿っていく。昔住んでいた家は汲み取り便所で幼い僕は風呂場に置かれた洗面器で泳いでいる大きな魚を見ていた。何故こんな所に魚がいるの?こんな事を思い出しながら読んでいました。もし自分が晩年になりもう一度読み返したら評価はもっと上がると思います。皆さんの最も古い視覚的記憶は何でしょうか?2016/11/20
キウ
2
「最後に誉めるもの」「日記と周辺」の二編。前作『猫の水につかるカエル』が父の死とその思い出が中心だとすれば、こちらは母の死とその思い出がメイン。子供のころ住んだ家の間取りを思い出しつつ、もうこの世にいない母と対話を重ねる。最後に誉めるもの、とは母親の骨。炉から出てきた遺骨を係員が誉める。「骨を誉めてもらってもね」「もう骨しか誉めるものはないじゃないか」。二編目は、膵臓癌が発見された母の死へと至る日々を、主人公とその妹の看護連絡ノートと、母親自身の手紙を引用しながら静かに追う。両編、死のにおいに満ちている。2013/03/12
さくら
1
母が亡くなって十七年経ち、亡き母をめぐる小説。世を去った母について、知っている記憶、知らなかった記憶、丁寧に集め、老いにむかいつつある老境を迎えつつある自身との現況を重ね、死を「命を使い果たした末のこと」と言い、亡き母への悲しみを客観視している所が尚の事母想いが伝わってくる。2014/04/03