ふたつの嘘―沖縄密約 1972‐2010

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ふたつの嘘―沖縄密約 1972‐2010

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  • サイズ B6判/ページ数 318p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062166850
  • NDC分類 916
  • Cコード C0095

出版社内容情報

沖縄密約をめぐる国の嘘によって人生を断たれた元新聞記者・西山太吉と、国の嘘を認めさせようと願い、動いた人々の記録。沖縄密約をめぐる二人の女の物語
本書は、沖縄密約をめぐる国の嘘によって人生を断たれた元新聞記者・西山太吉と、国の嘘を認めさせようと願い、動いた人々の記録である。
第一部では、「夫の嘘」と「国の嘘」に翻弄された西山の妻の半生をたどる。
第二部では、国による「過去の嘘」と「現在の嘘」に挑んだ女性弁護士の戦いに光を当てる。西山が「最後の戦い」として挑んだ情報公開請求訴訟をたどる。
情報公開をめぐる法廷で、かつて否定をつづけてきた密約を認めた元外務省高官は、こう語った。
「嘘をつく国家はいつか滅びるものです」。
あの日から、三十八年。 沖縄をめぐる「嘘」のあとを追った。

〈本書の抜粋〉
 自宅の電話が鳴った。めずらしく受話器を取ったのは夫(西山太吉氏)だった。
「作家の山崎ですけど」
 そう聞いて、夫は同姓の元同僚からだと勘違いした。
「最近、どうしてるんや」
「私は作家の山崎豊子よ。『太陽の子』や『沈まぬ太陽』は読んでないの」
「読んじゃおらんよ」
夫は間髪いれずに言い放った。山崎にとっては屈辱的な返答だっただろう。それでも丁重な口ぶりで、ぜひ(『運命の人』を)書かせてほしいと迫った。
「あなたの人権はぜったいに守りますから」――。

【目次】

〈第一部〉「夫の嘘」と「国の嘘」――西山太吉の妻 啓子
【序 章】十字架
〈ひそかに情を通じ〉新聞記者の夫の罪を問う起訴状の一言。あれから、すべてが狂った。夫はペンを折り、社会から抹殺された。一方で、密約は葬られた。
【第一章】 暗転
受話器をとると、女性の声がした。外務省の事務官だという。「ご主人の帰りは遅いの?」切る間際に、舌打ちが聞こえた。スキャンダルの予感がした。
【第二章】 傷口
事件後、啓子は日記をつづっていた。〈夫婦でいていいのか。果して、夫婦と云えるか〉〈すべてから逃れ得るには、死よりは道はないのだろうか〉
【第三章】 離婚
二十年近くも別居を続けてきた。すでに気持ちは離れていた。でも、なかなか決断できない。生ける屍のようになった夫を前に、啓子は揺れていた。

……以下<目次をみる>をご覧ください

……目次 ※<商品の説明>より続き
【第四章】 再生
事件から二十八年後の朝。夫がゴミ拾いから帰ってまもなくだった。「密約を裏づける米公文書が出た、と朝日新聞が報じています」転機は突然、訪れた。
【第五章】 逆風
外務省元高官も密約を認めた。ついに、夫は国を相手に裁判を起こした。しかし、敗訴。負けたまま死ぬわけにはいかない。夫はまだ、あきらめたわけではなかった。
〈第二部〉「過去の嘘」と「現在の嘘」 ――弁護士 小町谷育子
【第六章】 衝突
沖縄密約の文書を開示せよ――。作家の澤地久枝やジャーナリストの筑紫哲也らも立ちあがった。しかし、国の回答は「不存在」小町谷の心に火がついた。
【第七章】 封印
当時の日記で、 西山太吉は「死」について触れていた。葛藤と悔悟の末にたどりついた絶望。それから四十年近く、国への怒りが消えることはなかった。
【第八章】 反骨
「密約はない」。国はいまも嘘を重ねている。では、文書は消えたのか。小町谷は情報公開訴訟のなかでこう訴えた。〈no records, no history〉
【第九章】 記憶
「吉野さんの証言を聞きたい」。裁判長の言葉に、法廷がどよめいた。元外務省アメリカ局長の吉野文六は、沖縄返還をめぐる交渉の責任者。歴史の目撃者でもあった。
【第十章】 宿題
米公文書という「密約の証」を見つけた琉球大学教授の我部政明。その職人のような地道な作業の積み重ねが、国の築いた情報公開の厚い壁を破る武器となった。
【第十一章】告白
吉野文六は再び、法廷に立った。かつての刑事裁判での偽証を覆し、密約を認めた。三十七年ぶりに西山とも再会した。しかし、それで勝てるほど甘くはなかった。
【第十二章】追及
小町谷は突然、立ち上がった。「ひとつ、国にお聞きしたいことがあります」。原告が負わされている立証責任の一部を国に求めた。情報公開に風穴をあけようとしていた。
【終 章】判決
劇的な幕切れに、拍手が広がった。西山は目を潤ませ、妻の啓子は「離婚しなくてよかった」と初めて思った。小町谷は何度も判決文を読み返した。歴史の扉がついに、開いた。


諸永 裕司[モロナガ ユウジ]
著・文・その他

目次

第1部 「夫の嘘」と「国の嘘」―西山太吉の妻啓子(十字架;暗転;傷口;離婚;再生;逆風)
第2部 「過去の嘘」と「現在の嘘」―弁護士小町谷育子(衝突;封印;反骨;記憶;宿題;告白;追求;判決)
判決

著者等紹介

諸永裕司[モロナガユウジ]
1969年生まれ。東京学芸大学卒業。93年、朝日新聞社入社。「AERA」編集部、社会部、「週刊朝日」編集部などを経て、現在はアサヒ・コム編集部所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

111
沖縄返還時の密約を追った本である。 本件を扱った小説としては山崎豊子の 『運命の人』が有名だが、本書は  西山太吉の妻と 弁護士に焦点を当てる。 国民に嘘をついて密約を結んだという本質を男女スキャンダルにすり替えた事件の裏面が 丹念に描かれる…日本における情報公開の 苦闘の日々が今に蘇る、そんな本だった。2022/07/27

Machida Hiroshi

6
外交上の密約と言う国の嘘を暴くことに挑んで記者人生を断たれた西山太吉さんは西山事件として有名です。著者は西山元記者の奥さんの啓子さんと、後に米国の公文書で密約の存在が明らかになってから起された情報公開訴訟の訴状をまとめた弁護士の小町谷さんの二人からインタビューします。そして、本書、二人の女性を通じて西山事件を描き出す骨太のノンフィクションを書き上げました。2015/07/13

ちんペー

4
これだけ沢山の事実を紡いで書き上げた著者に脱帽です。 「嘘をつく国家は必ず滅びる」吉野氏のこの言葉は印象的。 先日の国会答弁で「国益と党益が相反したらどちらを優先する?」と訊かれ、国益に相反すれば自民党は解散する。そんなの当たり前」と息巻いていた現首相。空言にしか聞こえないのは自分だけかな?2013/03/19

リョウ

3
密約そのものの存在よりも、その取材過程にばかり注目が行ってしまうこの事件だけど、ワイドショー的な側面ではなく問題の本質にきちんと着目したこの本を読めてよかった。これだけの資料が出ているのにいまだに密約はなかったとする国の説明にはとても違和感を感じるし、そもそもその必然性はあるのか?とも思う。個人的な恨みや名誉の回復もあるけど、あくまで国全体の問題としてとらえた代理人のスタンスにも共感を覚えた。2011/08/27

satooko

3
高校生の頃、澤地久枝「密約」を読み、衝撃を受けたが、公文書情報公開裁判報道で久しぶりに見た西山太吉氏の顔も衝撃的だった。確実に老いているが、諦めを超えた怒り・憤り・無念さを隠しもしない(隠すことができない?)。思わず見入ってしまうとともに、目を背けてしまいたくもなる。あれからどうしていたんだ?と思っていたら、新聞書評で本書を知る。前半は妻に、後半は情報公開法裁判担当の女性弁護士に焦点を当てたもの。前半はなるほどそうだったののか、後半もなるほど、なるほどだが(著者は朝日新聞記者)、澤地さんの力筆を待ちたいと2011/05/10

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