出版社内容情報
生き残れるものなら、生きてみろ。
物心ついたとき、寒さに震えながら毎日を生きていた。昭和初期、開拓民一家の末娘の人生は、「地の果て」から始まった。直木賞作家、渾身の書き下ろし大作!
内容説明
物心ついたとき、少女はここで暮らしていた。アイヌ語で、「地のはて」を意味するというこの土地で。おがちゃの背中と、あんにゃの手に、必死にしがみつくようにして。北海道知床で生きた女性の生涯を、丹念に描き、深い感動を呼び起こす。構想十年―書き下ろし長編小説。
著者等紹介
乃南アサ[ノナミアサ]
1960年東京生まれ。’88年『幸福の朝食』が第1回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。’96年『凍える牙』で第115回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
83
舞台は大正から昭和にかけての北海道。少女とわの両親が投機で失敗し夜逃げのように開拓団に加わり北海道に渡る所から物語が始まります。夜行列車、青函連絡船、汽車、最後は発動機船で行くはずが流氷に阻まれ足止めをくうことに。読んでいるだけで苦しくて仕方ないような道中でした。その上、本当の苦労はここから。気弱な兄と違い、気性のしっかりしたとわは、相次ぐ不幸にも負けず朗らかさを失わず懸命に生きていきます。とわを助けてくれた三吉はもう登場しないのかな?続きが気になります。2020/12/08
taiko
76
北海道開拓団として知床に渡った「とわ」たち一家。森を切り拓き、ただただ生きていくために働き続ける。次から次へめぐる不幸、その中でも元気に育つとわだったが、小学校を卒業して間もなく、小樽に奉公にでることになった。奉公先での暮らしは、知床で見知ったものとは大違いの、丸で別世界のもののようだった。…この時代の、開拓団の暮らしの壮絶さに驚かされました。それをただ引き受けるしかなかった母つねが気の毒で仕方がなかったです。知床しか知らなかったとは言え、その中で健気に暮らすとわのその後が気になります。後編が楽しみです。2017/09/18
naoっぴ
69
すごくドラマチック!人間の持つ生きる底力に圧倒されっぱなしです。厳しい自然の知床の地に開拓民として移住し、自給自足のような生活を始めるとわの一家。楽ではない暮らしに突然やってくるほんの少しの幸運と大きな不幸にもまれながらも、たくましく生き抜いていく姿に感動しながら読む。上巻は、知床の厳しい自然との闘いの日々と、小樽での奉公までを描く。息つく暇もないほどの壮絶な生活ではあるけれど、読み手までもが生きてる実感を味わえる秀作。このあとのとわの運命に目が離せません。2016/01/16
ポチ
55
全てが凍り付く真冬の北海道。掘立て小屋で生活するとわ達の悲惨さがよく分かります。良く生きていたなぁ…。2020/12/19
reo
49
10年と少し前道東を旅行した。女満別空港に降り立ち観光バスで網走刑務所からオシンコシンの滝に立ち寄り、ウトロ温泉で一泊する。二日目は知床五湖から知床横断道路にて、羅臼経由で標津サーモン博物館に行く。さてその知床横断道路でのことバスガイドが「この辺りの熊笹の生い茂っている土地は、移住者が開墾した跡です。今は御覧のとおりの自然に還ってます。冬は寒さが厳しく大変です」と案内を訊く。「そらそうでしょうなぁ」と思っただけなんだが、後にこの本を読んだとき「あそこかー!”とわ”たちが苦労した土地は」と思ったものだった。2017/08/31