エスの系譜―沈黙の西洋思想史

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  • サイズ B6判/ページ数 300p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062165495
  • NDC分類 133
  • Cコード C0010

内容説明

「考える」「思う」の主語は何か。「思われること」は、本当に「私に思われ」ているのか。「私」を「捏造」したデカルトは、すでにこの問いを封印していた。しかし、近代以降、この沈黙の事象に対する哲学者たちの悪戦苦闘が始まった。リヒテンベルクに始まりフォイエルバッハ‐ニーチェ‐フロイトへと続く第一の系譜。一方、フィヒテに分かれシェリング‐ビスマルクに流れる第二の系譜。「人」とも「言語」とも「普遍的なもの」とも呼ばれながら、究極“それ”としか名づけようのない何ものかを巡って、人間存在の不思議を考え抜いた思想家たちの系譜を辿る。

目次

第1章 エスの問題圏(フロイトとニーチェ;ニーチェの因果性批判 ほか)
第2章 エスの淵源を求めて(「神なる自然」とゲーテ;フィヒテの課題 ほか)
第3章 変貌するエス(「自然の精神化」と「自然の物質化」;ヘルムホルツからマッハへ ほか)
第4章 エスへの抵抗(カール・クラウス;抵抗するローゼンツヴァイク ほか)

著者等紹介

互盛央[タガイモリオ]
1972年、東京生まれ。1996年、東京大学教養学部教養学科卒業。2008年、東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。言語論・思想史。現在、出版社勤務。著書に『フェルディナン・ド・ソシュール―“言語学”の孤独、「一般言語学」の夢』(作品社)がある。同書で「第22回和辻哲郎文化賞」「第27回渋沢・クローデル賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

内島菫

19
巨大ロボットは心身二元論ではないかという考えを、本書を読むとそうではなく「エス」ではないかと翻意したくなる。というより、心身二元論は「エス」から発しまた(けれどももはや到達不可能な)「エス」へ還ろうとする閉じないトートロジーの一過程ではないだろうか。本書によれば、主体のない、人称のないものを(仮に)「エス」と呼ぶとき、それは「私」や人称をもつもの、個体に対立するもの(例えば一般性や多数性)ではなく、超越論的なものとなり(超越的なものではない)、超越論的な世界は理念や概念もが経験になる場だという。2021/09/03

左手爆弾

3
感想が難しい。フロイトを学んでくると必ず出てくる「エス」の概念は実のところ、それ以前に元ネタがある。それらをたどっていくと、デカルトが見出した「コギト」の思想とは相異なる系譜が見えてくる...という筋。エスの系譜は狭義の心理学に収まるものではなく、「私が考える」という問題に対する別の回答として考えられた。だが、結局「それes」とは何なのか。民族主義が台頭すると、あっさりとドイツの国民性といったものと繋がり、排外的な思想を生み出してしまう。私の中にあって、私ではないものの系譜、これこそがエスの系譜だ。2019/12/16

jiroukaja

2
It rainsのitみたいに、I thinkではなく、It thinksじゃないかというお話。こういう本は大事にしたい。グロデックは読んでたから話がわかりやすかった。しかし、エスの暴走は、エスと思いたい意識の暴走なのではないのか。確かに意識がエスの一部ならエスの暴走とも言えるだろうけど、意識の中の捉え損なったエスと本来のエスを区別せずに語るのは良くない気がする。主語がなくても日本語は通じる。エスそれは日本語では語り得ないものであるからこそ沈黙なのかもしれない。2012/07/14

madofrapunzel

2
★★★★★ 画期的な本だった。「それが考える、ゆえにそれはある」とデカルトの〈コギト〉を読み替えたリヒテンベルグ、「それが私の中で考える」としたフィヒテ。捉え所のない、思考や言語では到達が遥かに難しいと考えられる領域に先人達はどう取り組んでいったのか。目が覚めるような1冊でした(^o^)2012/02/02

スシウォーク

2
フロイトのいうエスとは何か。歴史を遡り、その淵源と変遷をたどる。ニーチェとフロイトの関係など、とても面白い。ある意味、マニアックだけれど、エスに惹かれる人は読んだほうがいいと思う。2010/12/31

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