内容説明
椋鳩十児童文学賞作家が描く少女の心の満ち欠け。過剰歯が生えた5年生の鳴、片腕のないおじさん、言葉を発しない友だち、妊娠した担任の先生…。みんなどこか足りなかったり、多すぎたり。心とからだの痛みにやさしくよりそう物語。小学上級から。
著者等紹介
樫崎茜[カシザキアカネ]
1980年、長野県生まれ。2006年、講談社児童文学新人賞佳作受賞。デビュー作『ボクシング・デイ』にて、椋鳩十児童文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
45
母親のいない小5の鳴ちゃんと、学校やお父さんの職場である病院での人々との毎日。 人にはそれぞれ足りない所、余分な所があって、悩みながらも生活してます。 隣のクラスのひとみちゃんは全く喋らないために苛められます。 それを救うのが祭君と鳴ちゃん。祭君がいい子なのです。真っ直ぐで大らかで。 鳴ちゃんは、中々生えてこない前歯と、余計に生えてきてしまった過剰歯、耳の奥のポワンとした音に日々惑わされています。 お母さんがいたら、すぐに話せて気にならなかったかもしれませんね。 切ないけれど、いいお父さんが居てくれます。2015/08/29
はる
37
子供たちの繊細な心の動きを、瑞々しい筆致で描いています。日々の生活の中で些細なことで喜んだり落ち込んだり。生と死がごく身近に存在することに気付いたり。段々と感じ始めた大人への道。微妙な感情の描写は大人の読者にこそ響きます。それにしても祭くんの考え方がかっこいい。きっと素敵な大人になりますね。2015/08/13
izw
12
樫崎茜は続いて3作品め。繊細で人を気づかう気持ちの強い小学5年生の鳴(めい)の夏から3月までの体験を通していろいな面で大人になる過程が描かれる。父親が整形外科の医者、母親が亡くなっていて、父親の患者に右腕を無くした患者がいる、登校班が同じで最近転入してきた隣のクラスの女の子が全然声を出さない、担任の先生が妊娠して3月に赤ちゃんが生まれる、など、考えてみればかなり変わった経験をしている5年生ではあるが、意外にあかるく鮮明なイメージで描かれている。タイトルがなぜ「満月のさじかげん」なのかは、よくわからない。2019/03/02
ぽけっとももんが
10
「不安な気持ちは、言葉といっしょにからだの外へ出ていくものなんだ。人と話すって、人の話をきくって、とても大切なことなんだよ」だれにだって足りないもの、多すぎるものがある。歯の生え変わりに悩む鳴、話さない転校生、腕をなくしたおじさん、出産を控えた担任の先生。欠けているように見える月も本当はちゃんと丸い。見えているのはほんの一部でしかないことに気がつくのは、とても大切なことだ。2017/01/25
かち
8
こういう素晴らしい作品に出会えるから 児童書って侮れない。 タイトルが秀逸。隠されたもの、形のないものへの優しさを感じる。 …それにしても祭は頼もしく男らしい。2014/12/19