内容説明
だまし合いには勝たねばならぬ!生き抜くため、守るため、心に巣くう鬼は殺し、裏の顔は見せるまい。衝撃作『戦国奇譚 首』の作者が、信玄以後の甲信の武将たちの進退を描く。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、日本IBMに長らく勤務後、外資系日本企業の事業責任者を歴任。その後、執筆業に転じ、歴史小説や歴史に材を取った実用書を相次いで発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
onasu
23
長篠の戦いに敗れて後の武田方の諸将。生き永らえたにしても末は…、てんで正に「惨」な5編。 今年の大河「軍師官兵衛」でもそうだけど、武田家の滅亡は、片付いた後しか描かれない。それも無理はないけど。 何故ああも呆気なく滅んでしまったのか。その断片が書中に散りばめられており、同じ時がそれぞれの視点から描かれているのもおもしろい。勝頼公の凡庸さ故か、はたまた諸将の…。 リーダーの資質とは、なんてネタ切れのビジネス書みたいなことが思い浮かんだけど、知らなかった歴史の間隙を埋めるのに、佳作を読めたのは嬉しい。2014/07/04
Our Homeisland
10
面白かったです!お勧めです。文庫版も合わせてもどうしてここ読書メーターで、これだけの人しか読んでいないのかが理解できない、もっともっと読んでもらって良い出来の作品だと思います。どこかの本屋の陳列で「今、直木賞に一番近い人」と宣伝されていたので気になり読んでみました。巻末の著者の紹介で、日本IBM勤務から作家に転向した人だと知りました。1960年生まれだそうですからIBMの入社では私より数年先輩のはずです。武田滅亡を取り巻く物語、人物と事件の描かれ方が素晴らしく、関連性構築も見事な連作短編集です!2013/08/30
ハルト
7
武田家滅亡を、円の外側から中心に、そして敵側からと、さまざま視点・人物で見つめた、連作とも呼べるような短編集。着眼点がよく、おのおのの立場から見た歴史というものをドラマチックに描いてあって、おもしろかった。歴史というのは、こうしたひとつひとつの点が集まり、大きな流れとなっているのだと実感する。そしてその点には、さまざな悲しみや苦悩や後悔や嘆きがあるのだということも。すごく重みのある、しっかりした歴史ものでした。2010/09/04
mitsuru1
6
信玄死後、長篠合戦で敗れて苦しむ武田家やゆかりの武将、国人達、それぞれの思惑、命、家や義の為あるものは降伏、裏切り、またあるものは死を賭して戦う。それぞれを描く連作短篇集。2015/06/15
katta
6
隆盛を極めた武田家が信玄の死から滅亡へひた走る姿を、家臣や親族、一族などの苦悩から描く。いや、本当にたいした作品だ。甲府から信濃、駿河あたりの地図を見ながら、あるいは土地勘がある人だと面白さは倍増。天然の要塞も人の裏切りには勝てない。2010/09/26