ヘヴン

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  • サイズ B6判/ページ数 248p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062157728
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

「苛められ、暴力をふるわれ、なぜ僕はそれに従うことしかできないのだろう」
彼女は言う。苦しみを、弱さを受け入れたわたしたちこそが正義なのだ、と。彼は言う。できごとに良いも悪いもない。すべては結果にすぎないのだ、と。ただあてのない涙がぽろぽろとこぼれ、少年の頬を濡らす。少年の、痛みを抱えた目に映る「世界」に、救いはあるのか――。

内容説明

「僕とコジマの友情は永遠に続くはずだった。もし彼らが僕たちを放っておいてくれたなら―」驚愕と衝撃、圧倒的感動。涙がとめどなく流れる―。善悪の根源を問う、著者初の長篇小説。

著者等紹介

川上未映子[カワカミミエコ]
1976年8月29日、大阪府生まれ。2007年デビュー小説『わたくし率イン歯ー、または世界』(講談社)が第一三七回芥川賞候補作に。同年第一回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』(文藝春秋)で第一三八回芥川龍之介賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわさされるわそらええわ』(青土社)で第一四回中原中也賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

377
2010年度の芸術選奨新人賞受賞作。物語はいじめをプロットの中核にしているだけに、きわめて陰惨で読みすすめるのも辛くなる。そうした中で語り手の「僕」の唯一の救いともなりアジールともなるのがコジマの存在だ。しかし、「僕」にはコジマを救うこともできず、コジマの前で「僕」が暴力を受けなければならないが故に、事は単純ではない。百瀬の論理は中学生にしてはあまりにも論理的に過ぎるが、虐められる側から虐める側の論理を忖度すればあのようになるのだろう。世界の遠近を取り戻しはしたが、コジマを永久に失った「僕」の孤独は深い。2013/01/02

青乃108号

284
川上未映子の、男性目線で描かれた物語。斜視である事でイジメ抜かれる彼。そんな彼の「目が好き」と初めて言ってくれた、たった1人の彼の友達、コジマ。コジマ自身も女子でありながら父親を忘れない為の「しるし」として汚れた身なりでいるせいで女生徒からイジメられる存在だった。コジマは言う、私達が受けている事には意味があるのよ、受け入れるのよ、と。彼はその意味が理解出来ないまま、ある日「手術すれば斜視は治せる」事を知る。彼は迷う。コジマが好き、と言ってくれた目を手放せるのか…イジメを正面から描きながらとても切ない小説。2024/12/22

とら

222
この本で苛められてる子たちを可哀想だなあとか自分たちは思うわけだけれど、その本の中で苛めている人と一緒になって笑ったりシカトしたりしてる奴等まではいかないにしても、自分たちはやはりどこか通じてる部分はあるのだと思う。と言ってもこの本は出来上がってしまっていて、自分たちがどうしようと作り変える事は出来ないしどうしようも無い。世界はひとつでは無いから。みんな決定的に違う世界に生きている。自分の世界には関係が無いから、特に自分の世界には都合悪くないから苛める。ただ無意識に。...でもこれは加害者側の意見なのだ。2013/01/04

kariya

189
天国を見たことはないけれど地獄があるのは知っている。斜視が原因でクラスメイトから酷い苛めを受ける”僕”は、クラスで同様の立場にある女子のコジマと、か細く、ただ一つの拠り所となる交流を続けるが、収まらない苛めはやがて。苛める側、苛められる側、どちらの言い分も完結して相手に届かず、コジマの主張は心を守る為の血を吐く詭弁にも見える。だが自らの言葉を証明するかのようなコジマの姿は、人が望み得る限界を越えて恐ろしく痛く悲しい。ヘヴンは存在するべきだった。最後の光景のあの後で、コジマは何を見るのだろう。2009/10/14

Major

167
最近この作品について読メの友人と小さな読書会をする機会を得て、僕自身のレビューをまとめることにした。僕の友人に感謝する。表層的には「いじめ物語」が主題である。したがって、良心的な読み手のほとんどは、この主題が作り出す磁場に引き付けられる。重い鎖を巻き付けられてこの磁場に引き付けられる読者もいれば、苦々しい自責の念を背中に負って吸い寄せられる読者、少なからず後ろめたさを抱えて引寄せられる読者、さらに、この磁場に捉えられて、思い出したくない過去を振り返らざるを得ない読者も少なくないだろう。⇒10個のコメントへ2019/12/31

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