内容説明
奇怪なデフォルメで見る者を当惑させるロマネスク聖堂扉口や柱頭の彫刻群。神話や聖書に材をとり空間を埋め尽くす異形のものたちに共通するシンプルな造形原理、基本モチーフとは。
目次
第1部 秩序の確立(枠組―聖堂を埋める浮彫が従う法則;装飾―根源のモチーフ波状唐草文とパルメット(葉)
影響力(支配)―幾何学的装飾から具体的図像への発展)
第2部 形成(装飾的弁証法―怪物たちの奇態、人間像のデフォルメ;こぶし花柱頭―人間の頭、天使、野獣、幻想獣の繚乱;壮大な構図―タンパンに花開く“荘厳のキリスト”)
第3部 変形(動物、怪物の制作―三本脚と三身体、頭を取り換えられた動物;人間、人間の形をした動物―身振り、姿勢、均衡の中世的表現;解体と恒久性―変形された人間像が放つ不思議な力)
著者等紹介
バルトルシャイティス,ユルギス[バルトルシャイティス,ユルギス][Baltrusaitis,Jurgis]
1903‐1988。リトアニア生まれの美術史家。パリ大学で中世美術史の碩学アンリ・フォションの教えを受ける。中世ロマネスク装飾芸術の形態分析を中心に多様な研究を展開、独自の学風を築いた
馬杉宗夫[ウマスギムネオ]
1942年生まれ。東京芸術大学芸術学科修士課程修了。1974年、パリ大学付属考古学研究所博士課程修了。現在、武蔵野美術大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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∃.狂茶党
12
中世の建造物の、装飾についての本。 膨大なスケッチをもとに、一貫した法則、構造があることを証明していく。 大部分が、どのような力が働いているかの説明に当てられるので、関心が乏しい人には少し退屈かも。 後半まとめのような言葉が出てくると、かなり面白い。 基本的になんの訳にも立たない本の一種。2025/06/06
roughfractus02
5
Formations, déformations. La stylistique ornamentale dans la sculpture romaneが原題の本書は、10-12世紀ロマネスク時代の装飾様式を形成と変形という2つの動態から形態分析する試みである。著者自筆の膨大な図版はモーフィングさながら形成と変形を動態化し、ローマ的な古代とイスラムやビサンティンの「荒々しい生命」の力の混淆を読者に示唆する。万華鏡のような波状唐草文やデフォルメされた怪物たちは、石を象る諸力のせめぎ合いが作り出すのである。2019/06/09
ik
3
無秩序に見えるロマネスクの装飾彫刻を形の上から比較分類し形態的パターンを探る。順番を間違え師フォションの枠の構造を読む前に読んでしまったが、これから読んでも楽しめた。実物の写真を入れて欲しいという気持ちも最初はあったが、挿絵はすべて著書自身によるものと知り、その学問的姿勢と観察眼、目に見えるかたちに対する執着に感動。しかし目に見える形のパターン分析の面白さに反して、それではつかめないロマネスク彫刻の不思議な力強さというのはいかに言葉で表現できるものなのかということもまた考えさせられる。2013/05/06
shiro
1
本書は、著者のパリ大学博士論文を一般向けに書き直したものだそうだが、あまりの読み難さに何度も挫折しそうになった。一見混沌として見えるロマネスク美術も、「枠組の法則」「空間恐怖」と言った原理に従って構成されていることが分かる。資料は膨大で、よくこれだけの量を集めたなと思うほど。欲を言えばもう少し実物の写真が見たかった。2012/05/11
ヤクーツクのハチコ
0
ひたすら大量の美術情報を博物誌的に羅列してあり、ひじょうにしんどかった。だがしかし、読み終わった後行ったヴェネチア展で、今まで脳の表面をひたすらスルーするだけだった装飾品の類いがガンガンと頭に入ってくる。いやあロマネスクを知らずして、西洋美術理解なしだったのね2012/08/12