内容説明
蝶は、サムライの娘でありつづけようとした。自分を守ってくれた母と祖母の死後、妓楼の養女に、そして舞妓になりながら、蝶はアメリカに渡る日を夢見つづける。目の前に現れたアメリカ海軍士官は、そんな蝶に理想の日本女性の姿を見出したのだったが―。
著者等紹介
市川森一[イチカワシンイチ]
1941年長崎県生まれ。日本大学芸術学部卒。作家・脚本家。代表作に、NHK大河ドラマ「黄金の日日」「山河燃ゆ」「花の乱」、映画「異人たちとの夏」(日本アカデミー賞最優秀脚本賞)「長崎ぶらぶら節」「黄色い涙」「花影」、戯曲「黄金の日日」(大谷竹次郎賞)「あづち」「水に溺れる魚の夢」「ヴェリズモ・オペラをどうぞ」「リセット」「乳房」、ミュージカル「銀河鉄道の夜」「海のサーカス団」、朗読劇「蝶々さん」、小説「紙ヒコーキが飛ばせない」「夢暦長崎奉行」などがある。また、芸術選奨文部大臣新人賞、芸術選奨文部大臣賞、第1回向田邦子賞、NHK放送文化賞のほか、紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あつひめ
28
短いけれど濃厚な女の一生だったような気がする。武家の娘として、一人の女として、母として自分や周りに対していつも誠実であろうとした蝶々さん。偽られた結婚だったとしても蝶々さんには紛れもない本物の結婚だった。どうしてこんな試練ばかり…と読んでいて切なくなったけど、生まれたときから試練を乗り越えながら生きてきた蝶々さんは本望だったのかもしれない?聖書の言葉が蝶々さんの生きるための道しるべだったのかなぁ。オペラだけではわからない蝶々さんの姿を見ることができました。ドラマが今から楽しみです。2011/09/08
どんちゃんママ
20
「蝶は往く霧立つ海に花ありと。」〜死んだ後は蝶に化身し、なおも理想の花を求めて海を渡っていく。 〜最後まで 武士の娘として生きることを貫いたのですね。せめて ユリちゃんに会わせてあげたかったです。2015/11/05
ゆみねこ
10
最期まで侍の娘として生きた蝶々さん。腹立たしいのは「長崎式結婚」と称して合法的に買春をした士官たち。男の身勝手さに怒りを覚える。フランクリンは蝶々さんを生きた人形かおもちゃのように扱う。夫人のマーガレットの言葉にも、どれほど傷つけられたかと。誰のおもちゃでもなかったという証明をし、葉隠の意気を示した最期はやはり切ない。2011/08/05
えぐ@灯れ松明の火
9
蝶々さんが武士の娘としての誇りと夢を最期まで捨てなかったからこその悲劇。 どこかで妥協していたら、助けを求めていたら、弱い心を見せられたら、違った運命が開けたのでしょう。 それでも最後まで美しい生き方を曲げなかった蝶々さんに、私もコレル夫人と同様、蝶々さんの本当の心はわからないままで、ただ畏敬の念を覚えるばかりです。 そして、宮﨑あおいさんでドラマ化されるんですね。楽しみw2011/10/06
コナン
4
切ない切ないお話。オペラ?悲劇?この小説を読んだら「こんなの蝶々さんじゃない」て叫ぶさ。志が高く、最期まで潔白だった、純粋だったお蝶に幸せは手の届きそうな所でスルリと逃げてゆく。「ワルは登場しない(解説)」。全ては私には理解できない時代背景にある。火事場泥棒のような親戚、人権を無視した身売り、水あげという制度も当時は今ほど違和感ないのかも。長崎を遊び場にする外国人には背丈も服装も違う日本人はヒトではなく、遊び道具として消費されたのも時代だ。でもね、不通をしたフランクリンなんかより蝶は神に愛されたよ。2011/12/14
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