内容説明
アラブ古典性愛書に出会った女性図書館司書の、美しくも知的な告白小説。
著者等紹介
ネイミ,サルワ・アル[ネイミ,サルワアル][Neimi,Salwa Al]
シリア・ダマスカス生まれ。生年不祥。1970年代よりパリ在住。ソルボンヌ大学にてアラブ文学と演劇を専攻。1980年に最初の詩集を刊行。81年よりアラブ関係の新聞・雑誌でジャーナリストとして働く。94年に短篇集を出版する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
29
アラビア語で書かれた性愛についての書。バートンは英語で『千夜一夜物語』でアラビア語圏内での性愛事情を比喩で秘すという艶めかしさを纏わせて語った。こちらは作者自身の「思想家」との逢瀬や情事で考えた性愛やジェンダーについてあっけらかんと語っているので官能性が薄まっています。でも禁欲的の象徴でもある図書館の中に自分の「淫蕩さ」に見合わせた本を忍ばせて置くのは確かに背徳的でセクシャラス。そして「思想家」の女性論に内心では違うと思いながら微笑む作者の女性の行動の不可解さや女性論には同性として少し、共感します。2015/09/07
S.Mori
28
馴染みのないアラビア語圏の小説です。打ちのめされる凄い本でした。性愛があっけらかんと描かれます。主人公は男性の心より体が欲しいとか、一人の男性を愛し続けるのは無理だと語ります。抑制された書き方ですがポルノ小説のような場面もあります。同時に彼女は司書であり、言葉や物語にこだわりを持っています。性愛と物語へのこだわりという相反するものがきれいに一つにまとまるのが、最後の章です。ここを読むとなぜ彼女がこの小説を書いたか理解できて、感動がこみ上げてきます。性とは生きる事であり、生きることは物語ることなのです。2020/08/07
やまはるか
10
「アラブ世界秘伝のエロスをいまここに開示する」と帯の謳い文句にあるが、訳者あとがきは「期待を膨らませて本書を手にとる読者は、失望を余儀なくされることだろう」と断っている。訳者の方が正直だと思うのは読者の個体差によるものか?が、シリア・ダマスカス出身パリ在住の女性の手になるエロスをテーマにした本には違いない。「あなたを推薦したんですが、どうでしょう?承知してもらえれば、詳細について連絡すると言ってきているのですが。どうでしょう?」内気な上司である図書館長を会話文だけで描写する手はゆかしい。 2022/07/10
きゅー
6
レバノンのベイルートの出版社から刊行されたが、アラビア語圏の大多数の国では禁書に指定された。その後、フランスとイタリアで刊行されるとベストセラーになったとのこと。 アラビア語圏で禁書になったという"キャッチフレーズ”があったからフランスとイタリアで売れたのではないかと勘ぐってしまう。特にエロティックさを強調している内容ではないし、小説として完成度が高いとも思われない。2022/12/07
世玖珠ありす
5
パリ在住のアラブ女性によるセクシャルなエッセイ。アラブの性愛文学を世界に紹介したい!という情熱でこの本は出来ている。読んでる最中にあのパリでの襲撃事件と立てこもり事件が起こり、この作者が作中で生き生きと性(セックス)を語る姿との奇異なギャップを感じました。ただ、この作品を読めばアラブ女性に対する印象がガラリと音を立てて変わるはず。今だからこそ、読んで欲しい。2015/01/15