内容説明
書き残したのは嘘?真実?4年もかかって完成しなかった書下ろし小説、サイトに連載した旅行、合コン、妻との出会い…アル中になり、ガンで亡くなった42歳の男の未刊行原稿のすべて。
目次
1 カモのがんばらないぞ
2 恋のバカっ騒ぎ
3 年譜
4 焼き鳥屋修業
5 旅のつづき―通りお通り宮古島
6 邂逅
7 著作一覧
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
s-kozy
60
アル中を経て、癌のために亡くなった西原理恵子の元ダンナ、鴨志田穣さんのエッセイや未完の小説を集めたもの。初対面の医師を見て、「ふと指先を見ると、いかにも手先の器用そうな、まるで立派な寿司職人のような、一見華奢でか弱そうに見えて、中にはワイヤーの一本でも入っているのではないか、と思わせる指を持っていた」(「カモのがんばらないぞ」(33頁))と断ずる観察眼に著者の繊細な神経を感じる。素面になっている状態で書いたであろう最後の「邂逅」には泣かされた。(絶筆)「それから二人はずっと手を離すことはなかった。」2015/07/17
藤瀬こうたろー
13
2007年に42歳の若さで亡くなった漫画家西原理恵子さんの元旦那、鴨志田穣さんの遺稿集。鴨志田さんは西原さんとの間に2人の子をもうけるも、アルコール依存症になってしまったことで離婚し、やっとそれを克服したかと思いきや、余命宣告付きの腎臓がん発覚。初めて鴨志田さんの文章を読んだけど、味があってすごく読みやすい文章で人柄がにじみ出てる。何より情感がこもってる。一番良かったのは身の入らない浪人生活を止めて住み込みの焼き鳥店員をしていた20歳の頃を描いた「焼き鳥屋修業」でした。繊細で優しい酒好きだったんだなあ。2021/08/13
ウチ●
5
漫画家の西原理恵子氏の元・夫。毎日かあさんで「アブナイお父さん」として描かれた「鴨ちゃん」こと鴨志田穣氏の文字通り遺稿集。クメール・ルージュの捕虜になったりした戦場カメラマン時代を経て、アルコール中毒を発症。やっと乗り越えたのに腎臓がんで2007年死去。「アジアパー伝」「怪人紀行」等のシリーズは未読のまま「遺稿集」な訳ですが、自らの倦んだ青春を描いた「焼鳥屋修業」飲んでいるのか飲まれているのか「旅のつづきー通りお通り宮古島」、西原さんとの出会いを描いた「邂逅」この三篇は良かった。特に「邂逅」。まさに純愛。2017/03/15
ようこ
5
分厚い本なのに手に取って読み始めるとあっという間に読んでしまう、読みやすいんだけど、いろいろ考えさせられる本だ。焼鳥屋の話が面白く、これからどうなっていくんだろう・・と思ったところで未完なことが分かり、残念。この著者は周囲に愛されていた人なんだろうなあと読み終わって思った。2012/11/18
yanoms
4
鴨志田月間終了。小説、ルポ、エッセイなど様々な形式で3冊読んで、映画も2作品見たけど、本人を含むいろんな視点があっても鴨志田氏の人間像はブレない。純粋すぎて生き辛いが故に真性のダメ人間。だからこそ彼の言葉に惹かれる。最後の一編『邂逅』は、彼の唯一のシラフの言葉のような気がして泣けた。ワンカップを呑んでいる。彼の話をしながら酒を呑めることの幸せを噛み締めている。西原理恵子が今、高須クリニックと付き合っているというのがまたなんとも言えない。2013/10/21