内容説明
「被葬者は誰だ」「画家は誰だ」「壁画をダメにした責任者は誰だ」―両古墳は、この三大トピックばかりが注目されてきた。しかし、壁画そのものにこそ、古代の精神世界を知る豊かな手がかりがある。ふたつの古墳壁画の画家は同一人物であり、唐への留学生だった。画家像の真相に迫り、中国の古代思想や絵画資料を参照しつつ、ひとつひとつの壁画にこめられたメッセージを浮き彫りにする、著者渾身の力作。
目次
序章 高松塚・キトラ古墳の発見と被葬者像
第1章 壁画の描かれた立体的キャンバス
第2章 似ていて異なる両古墳の壁画構成
第3章 玄武図から推理する古墳の前後関係
第4章 天文図は話題の宝庫
第5章 日輪と月輪の仕掛け
第6章 四神の徹底分析
第7章 十二支像と人物群像
終章 過去と未来の壁画
著者等紹介
来村多加史[キタムラタカシ]
1958年生まれ。関西大学大学院博士課程修了。85年から88年まで北京大学考古系に留学。現在、奈良文化女子短期大学教授。専攻は、中国考古学ならびに中国軍事史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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千尋
6
メディアで話題となった高松塚古墳とキトラ古墳の壁画について詳しく書かれている本です**四神の分析や日輪・月輪信仰など・・様々な視点から壁画の意味が読み解けて、とても面白かったです**2010/10/25
とりもり
2
名前と壁画の写真くらいしか知らなかった2つの古墳の壁画について、実に詳細な考察を加えた本。細部の描写などから、同一の画家によって描かれ、キトラ古墳→高松塚古墳の順に造られたと結論付ける。壁画の背景なども含めて、古代の葬祭についてもよく理解できる。被葬者が誰かなどの一般的な疑問には全く答えていないが、知的刺激に満ちた一冊。オススメ。★★★★☆2017/12/21
cameraf6
0
キトラ古墳と高松塚古墳とさまざまな角度から比較がされてあります。また、中国の思想や歴史と関連付けたりして、知らない一般人でも分かり易く表現されています。2016/10/18
あっちー
0
図書館本 被葬者は誰か、なんてことはおかまいなしに、高松塚とキトラ古墳の壁画についての考察。中国の壁画との比較など、線画を使って分かりやすく解説されている。誰が、何故?という疑問を掘り下げることが多いので、新しい視点だった。2015/12/05
jdrtn640
0
読み終えると、確実に両古墳壁画の見え方が変わる本です。筆者は、徹底して画家目線からの分析を貫き、両古墳壁画についての持論を展開します。中国や高句麗の古墳壁画および古代人の宇宙観や中国思想を紹介しながら、画家が壁画に託したメッセージや世界観を紐解きます。2010/08/19