内容説明
慈悲は本来、行動の規範ではなかった。宮澤賢治と同じ仏教者の視点から『法華経』、そして賢治に静かに対座する。宮澤賢治、『法華経』に対座した慈悲の探求。
目次
第1章 「春と修羅」の周辺
第2章 愛と慈悲、そして行き過ぎる表現
第3章 動物への慈悲、そして美しき徒花
第4章 静なる職業と慈悲
第5章 自力の慈悲、他力の慈悲
第6章 慈悲と通信
第7章 「もう一つの国」と植物たち
第8章 田園とインドラの網
第9章 慈悲のからだと「雨ニモマケズ」
第10章 「聴く」という慈悲
著者等紹介
玄侑宗久[ゲンユウソウキュウ]
1956年福島県三春町生まれ。安積高校卒業後、慶應義塾大学文学部中国文学科卒。さまざまな仕事を経験した後、京都・天龍寺専門道場に入門。現在、臨済宗妙心寺派福聚寺副住職。2000年「新潮」10月号に発表した「水の舳先」が第124回芥川賞候補に。2001年「中陰の花」で第125回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さっちも
16
「世界ぜんたいが幸福にならないうちは個人の幸福はありえない」こんな不可能な理想の宣言は、たいてい滑稽や奇妙さがつきまとう。だけど、賢治の言葉は、切れば血が吹き出るような内実をともなって、読むものに力強く訴えかける。著者は、期待を上回って、賢治がもつ現実を超える力に近接してみせる。良かった、素晴らしく深い仕事でした。2019/03/02
ぱんにゃー
15
「文学」(宮沢賢治)と「仏教」(法華経)どちらも数年前まで全く縁の無かった私です。 玄侑さんの本を読むと『知識』が身に付いた気がします。 しかし、「文学」も「仏教」も『智慧』が大切。 そんな所を、あとがきのタイトル『拈華微笑』に感じました。ありがとうございます。2013/06/03
カツドン支持者
2
宮沢賢治といえば熱烈な法華経信奉者として知られる。法華経はやもすると排他的攻撃的な部分もあるが、玄侑さんは賢治の思想の中に宗教的な寛容性を見る。それは両親から影響を受けた浄土真宗であり、岩手の大自然への畏敬の念から現れたものだ。賢治は法華経を中心としながらも土俗的なアニミズムを作品に落とし込む。それは自然への親しみと畏敬、そして山川草木悉皆成仏に象徴される全ての命への平等心という仏の心を賢治が大切にしていたからだと玄侑さんは語るのだった…2018/07/02
彩美心
1
浄土系の受け入れる慈悲と日蓮宗の行動する慈悲の違いが印象的だった。2018/10/23
あんせる
1
宮沢賢治について、未だによくわかっていないことが多いのだけれど、この本を読んで少し納得できたことと、岩手を出てから長い時間の中で忘れていて思い出したことがありました。2012/09/08