内容説明
オウム「治療省大臣」にして地下鉄サリン事件の実行犯・林郁夫。その慟哭の法廷から、未曽有の無差別殺人事件とオウムの真相に迫る渾身のノンフィクション・ノベル。
著者等紹介
佐木隆三[サキリュウゾウ]
1937年4月、朝鮮北部生まれ。福岡県立八幡中央高校卒業後、八幡製鉄(新日鉄)に勤務。1964年退社。1975年、『復讐するは我にあり』で第七四回直木賞受賞。1991年、『身分帳』で第二回伊藤整文学賞受賞。北九州市門司区在住
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感想・レビュー
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こばまり
53
小説的手法を用いた故に小説と銘打っているが、自称裁判傍聴業の著者による公判の模様はノンフィクションの趣があり、只ならぬ緊張感。第23回公判で被告人自身が披露した麻原彰晃の精神分析に、医師としての明晰さを垣間見た。オウムとは一体何だったのかと今も思う。2018/10/31
そのぼん
23
凶悪事件を起こした教団の信者であり、実行犯の一人であった男の裁判の経緯が詳細が描かれていました。色々と犯人のこころの動きみたいなものも描かれていましたが、やはり『浅はかだなぁ』としか言い様のない感じがしました。どんな理屈をつけてもやってしまったことは戻らないし、許さないと思いました。2014/11/02
ひさしぶり
17
解脱したいという欲望をちらつかされ、財産をお布施させられると、これだけお金を出したのに、ウソであってたまるかと考える。取調官が結婚詐欺に喩えて林郁夫氏のオウム真理教への入信を語った。林氏の真摯な悔恨と反省その心情吐露と事件との落差さよ。実行犯でありながら死刑判決のでなかった彼を責めきれない。時代流行の中、事件の深部に入ってしまうと本当を見失なう。今コロナ禍も後の時代に振り返るとどう映るのだろう。冷静な麻原観もかえって悲哀を感じる。2020/07/04
ちょん
15
どう考えても林郁夫被告に同情は感じ得ない。見るからに怪しい麻原に引き込まれてしまったのは弱さなのか。2014/02/18
フクミミ
13
忘れかけていたオウム真理教事件。この本を読んで思い出した事も多い。腕の良い心臓外科医だった林郁夫、彼が何故地下鉄サリン事件の実行犯になってしまったのかが書かれてある。地位も財産、全てを捨てて入信した結果が殺人犯とは。 マインドコントロールから解けた林郁夫の葛藤が文章からにじみ出ているようだ。多くの人々から家族や財産を奪って人生を狂わせ、優秀な人材達を犯罪者にした麻原彰晃という不条理にいまさらながら怒りを覚える。2017/10/31