内容説明
ちひろの死後三年目に、敗戦の翌日から書きはじめられた日記「草穂」が、疎開先・長野県松本市の母の実家跡で発見された。「国破れて山河有り」と記された野山のスケッチにはじまるこの日記には、妹や従妹のスケッチ、強いタッチで描かれた自画像、宮沢賢治そっくりの文体で書かれた詩、武者小路実篤の『幸福者』からの抜き書きとともに、突然訪れた敗戦への思いや、東京へのあこがれなど、これからをどう生きるか思い悩む二十六歳のちひろが赤裸々につづられている。
目次
日記「草穂」(いわさきちひろ)(八月十六日;八月十七日;八月十八日;八月十九日 ほか)
解説 ちひろの原点「草穂」(松本由理子)(「草穂」発見;国破れて山河有り―角影にて;自らを見つめて―新橋にて;宮沢賢治への思い ほか)
著者等紹介
いわさきちひろ[イワサキチヒロ]
1918年福井県に生まれ、東京で育つ。東京府立第六高等女学校卒。藤原行成流の書を学び、絵は岡田三郎助、中谷泰、丸木俊に師事。子どもを生涯のテーマとして描き、九三〇〇点余の作品を残す。1974年死去。享年五十五歳
松本由理子[マツモトユリコ]
1952年千葉県生まれ。東京芸術大学音楽学部楽理科卒。いわさきちひろの没後、ちひろの長男松本猛とともに、ちひろ美術館建設に取り組む。ちひろと、ちひろが絵に託した思いを語り続ける。ちひろ美術館・東京副館長。(財)いわさきちひろ記念事業団事務局長
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
43
ちひろの死後三年目に発見された、敗戦の翌日から書き始めた日記。「はじめに」で<(ちひろが)藤原行成の流れをくむ和様の書を学んだ>とあるが、オリジナルを原寸の写真図版で掲載しているため、書も楽しめた。いやぁ、素敵な書だ。意外に思ったのは、実篤の『幸福者』から多くの引用があったこと。冒頭で、<結婚は早すぎてもいけない、遅すぎてもいけない、無理が一番いけない。自然がいい>と。解説によれば、<ちひろには、つらい結婚の経験があった。二十歳のとき、岩崎家を継ぐために婿養子を迎え、夫の勤務地である大連に渡ったものの、⇒2020/03/04
ゆぅいちゃん
0
ちひろの優しく淡い絵の向こう側に、激しく強い女性がいる。...若く、終戦を迎えた翌日にはじまる日記という特別な事情のせいではなく。宮澤賢治の『雨ニモマケズ』が戦時中にどう利用されたか、も、震災直後の扱いが思い出されて、改めて考えさせられる...2014/09/01
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