内容説明
祖母・持統天皇から「氷高を長屋王に婚姻せたりはしません。あの皇女は、もっと大変なことが出来したときに重要な地位に即いてもらわねばなりません。誰彼の妃になどしてはならない」と命を受け、母・元明天皇から「私が生きているあいだは、不比等はお前を御位から下ろすことはできますまい。お前は推古様のように長生きして、長く皇位に即いている必要があります」との言葉を受けて、政争のただ中に、氷高皇女は即位する。生涯独身だった美しき女帝をとりまく、不成就の恋の歌。政争と不思議なめぐり合わせで、祖母、母、娘と三代の女性がつづいて皇位に即く。氷高元正天皇の波乱の生涯。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TheWho
8
前読の永井路子著「美貌の女帝」と同じく氷高皇女こと女帝元正天皇を描いた古代史絵巻。やはり持統天皇から続く女帝の系譜の中で、藤原氏との政争が語られるが、本著は特に氷高皇女に悲哀が赤裸々に語られているいる事が、彼女の波乱に満ちた生涯に心を打たれた。昨今巷では、愛子内親王の天皇即位を望む市井の声が大きくなっているが、女帝の系譜と歴史を紐解けば、女帝自らの人生は哀しい生涯であった事を鑑み如何なものかと感じてしまった。ともかく悲哀の女帝を描いた良著です。2024/12/29
チャック
5
「美貌の女帝」で奈良時代小説に興味を持った。 三枝本の前半は母元明天皇の話でじれったいし、氷高皇女のインパクトが薄かった。聖武天皇の彷徨を止めたあたりが、氷高の意地と良識かな? もっと恋をして、人として成長してから皇位に上って欲しかったな。橘諸兄が憎らしい橘三千代の子供とは、気持ち複雑だったろうな? あとがきの愛国百人一首の話は、軍国少女だった母から聞いたことがある。母の記憶は楠木正成 実朝だったようだ。後年ネット社会になって、愛国百人ググったのだが気持ちは暗澹とした覚えがあった。2023/10/02
寝覚の朔
5
長らく寝かせてしまっていた1冊。 永井路子作の「美貌の女帝」と重ねて、書かれ方の違いを感じるのもまた一興。前半部分は、氷高の母である元明天皇の視点が多い印象。美貌の皇女をめぐる色恋沙汰に、定番の長屋王だけでなく、舎人皇子や宇合(こっちはでっち上げスキャンダルのようだったけど)が入ってくるのが新鮮。橘諸兄(葛城王)との関係も良し。2021/09/10
24う゛ぃれっぢ
5
奈良時代の女帝・元正天皇ですが、生涯未婚の美貌の人という古代史を題材にするのにとても興味のわく方です。どうしても、永井路子の『美貌の女帝』と比べてしまうのですが…こちらの作品は、藤原氏と皇親勢力の対立に重きがあり(永井作品は蘇我と藤原の対立なんですよね)舎人皇子や橘諸兄とのエピソードが面白かったです。最後も諸兄を絡ませたおかげで月日の流れを思いつつ、決して悲しくないものになっていました。2020/12/30
しき
4
同じ氷高皇女を描いた永井路子さんの「美貌の女帝」に比べれると、藤原一族vs天皇家の争いが、淡々すぎる描かれ方だなと思った。永井版氷高皇女に比べると、「あんた頑張ったんか?」って感じが否めないかなぁ。しかし、書く作家によって氷高の恋の相手がいろいろなのは面白いと思う。2009/08/10
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