スプートニクの恋人

  • ポイントキャンペーン

スプートニクの恋人

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 309p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784062096577
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。とても奇妙な、ミステリアスな、この世のものとは思えない、書き下ろし長篇小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

367
ミュウが僕に言う「それはきっと、あなたが誰かになにかを期待したりしないからなのね」。ここでもやはり村上文学に通底する一種のニヒリズムが根底にあるだろう。しかし、それでいながら寂寥と孤独とが物語の全編を覆っているのである。僕も、すみれも、ミュウも等しく孤独だ。暗闇の中、地球の周りを回り続けるスプートニクの末裔たちは、まさにその孤独の喩に他ならない。なお、物語のエンディングは予想しにくかったのだが、なかなかに気の利いた閉じ方であったし、その余韻は深い。孤独を噛み締める物語。2012/04/30

どんぐり

83
同じ世界で同じ月を見ているのに、ここにはすみれがいない。あれ、これって青豆の1Q84につながる世界だ。ただ違うのは、主人公のぼくとすみれのふたつの衛星が一瞬交わることはあっても絶対の孤独の中でそれぞれの軌道を描いてまわっているということ。すみれが残した物語内物語には、一晩観覧車の中に閉じこめられて、双眼鏡で自分の部屋の中にいるもう一人の自己の姿を見るオースターの『幽霊』のような話も出てくる。ギリシャの小さな島で謎のように消えたすみれを発見してほしかったんだけど、不完全燃焼で物語は終わる。2019/02/20

キジネコ

50
初めて宇宙空間を飛んだ生命として、そのライカ犬が記録されました。役割を終え星を周回する金属片となったスプートニクの中で彼は、二度と踏むことのない遠い大地を眺めながら命を終えます。象徴的に手向けられた冒頭の一文、作家は「そういう物語を始める」と読者に語り掛けます。「恋愛」という双方向の記号で連繫する三人の登場人物が其々の「ここと似た別の世界」を垣間見ます。愛欲の虜囚となる片割れ、木の上から忽然と姿を消してしまった子猫、人参と綽名される無言の小学生の心の影、愛犬の喪失、そして愛を追って消えた22歳のすみれ…2016/08/30

佐久間なす

46
考えるじゃない、感じるんだという言葉がよく似合う、不思議で少し変わった恋愛小説でした。 はっとする言葉や場面がたくさんあったんですけど、特にそう感じたのは、人が自分について表現する言葉は、本当に自分を表現しているとは限らないと主人公が語っているところですね。あー確かにと強く思いました。 この小説を読んで、村上春樹って面白いなあと思ったので、また違う作品を読みたいです。2012/10/20

ソーダポップ

44
久しぶりに村上春樹さんの著書を読んだ。相変わらず難解な解釈を求められました。私の解釈では、「喪失」がテーマのように感じます。この一冊に溢れる「喪失」。冒頭にも少し描かれている、ソビエトの回収されなかった、人工衛星スプートニクのような孤立的で喪失感を味わう著書でした。2021/09/04

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/553350
  • ご注意事項