内容説明
夫が箱館戦争から生還した夜、妻は大川に身を投げた。江戸から東京へ、混乱の時代をしたたかに生き抜いた男と女を描く感動の長編。時代小説大賞(第9回)受賞作。
感想・レビュー
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dahaappy
1
明治維新に翻弄される江戸(東京)の人たち。落ちぶれる人、したたかにチャンスをつかむ人。この物語の主人公は旧幕臣の若夫婦だ。夫は幕軍に身を投じ、維新軍との戦いで函館まで転戦し遂には捕縛されてしまう。妻は便りもなく行方不明の夫は戦死したものと思い、新たな人生を歩みだす…。数年後そこに釈放され変わり果てた江戸に戻ってきた夫が現れる。歴史の流れ、時間の経過の残酷さ…そんな中に身を置きながらも人との関わりが、いつのまにか未来に対して前向きにさせてくれる…。維新直後の江戸の様子が生き生きと描かれている。2011/01/25
Kaoru Marukawa
0
明治維新による武士の大失業については浅田次郎さんの幾つかの作品で読みましたが、こちらは当時の一気に寂れた東京の様子が詳しく描かれて新鮮でした。文明開化の荒波をくぐり抜けた男と女の心映えがそれぞれに「節度」「心意気」などを凝縮して描かれていて美しいと感じました。武家の女性の嗜みと町人の女性の世間知のコントラストも甲乙付け難く読み応えのある一冊です。大商人の茂平の太っ腹さと色好みも高感度高し!そしてその反面の「後ろめたさ」が非常に好ましく思いました。2014/09/07