内容説明
村上春樹が追う、地下鉄サリン事件。迫真のノンフィクション、書き下ろし。
目次
千代田線
丸ノ内線(荻窪行き;池袋行き/折り返し)
日比谷線(中目黒発;北千住発中目黒行き)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
92
地下鉄サリン事件の被害者やその家族に村上春樹がインタビューした一冊。30年前の事件だが今読んでも胸が苦しくなる。それぞれの勤務地に向かう途上だった方が多く、外国人も含まれ、事件が及ぼした後遺症やオウムへの感情は人それぞれだ。当時は東京にいたがこの事件の2か月前に阪神大震災が起き、世情が騒然としていたことが蘇った。事件からさほど年月が経たないうちにこの記録を残したことは貴重だと感じざるを得ない。村上氏の思いは「目印のない悪夢」というあとがきに記されているが30年経ち日本の閉塞的状況が強まっている現在、→2025/03/22
さつき
63
以前から気になっていた作品。地下鉄サリン事件の被害者やその家族60人に村上春樹がインタビューしています。あの日、どの駅から何両目に乗車したかという話しの前に、語り手が幾つでどこ出身で何の仕事をしているかなどプロフィールも紹介されているため、一人一人の人生がより深く感じられます。突然、異常事態に巻き込まれてしまった時、人はどんな行動を取るのか。思いもよらない事実も多くページを捲る手が止まりませんでした。とても衝撃的で辛い気持ちになりましたが読んで良かったです。2024/10/30
寛生
58
【図書館】「時間と存在」にてのハイデガーによる《主観性/客観性》についての議論はむろん承知の上でいうがー常日頃出来る限り《客観的》に語ろうと努めているがー、どうしても《主観的》な感情を抑えきれない。その《主観的な感情》とは、「オームは許せない」という感情。それは、読書中消え去る事はなかった。オームのサリンについては昨年も幾冊か読んだ。が、こんな読書体験は初めて。私自身が当事者/被害者ではないが、読書行為のみによって、《許せない》という気持ちを抱く自分にも少し驚く。まずそれが第一。2015/01/07
林 一歩
53
他人事ではなく、彼らは私たちと同じ普通の日常を送っていた人たちだったのだ。その日常の裂け目に潜む暴力の刃にいつ斬りつけられるか分からない。そう思うとちびりそうになる位に怖くなる。2013/04/09
yumiha
42
読む本がなくて空腹状態の私を見かねて、友人Yちゃんが郵送してくれた本。オウム真理教による地下鉄サリン事件の被害者62人からの聞き書き。つい数量で把握しがちな「顔のない多くの被害者」をきちんと浮き彫りにしている。思えば、コロナ感染者も数量で見てしまいがちだが、その一人一人に顔があり日々の暮らしがある。身近な家族でなければ、やがて忘れ風化してしまうのだと思い知らされた。「テレビ局は自分に都合の良いところだけ放送」「危機管理の体勢そのものがかなり杜撰で不充分」で現場の者が酷い目に合わされるのは、コロナも同じ。2020/05/20