内容説明
雅子、43歳、主婦。弁当工場の夜勤パート。彼女は、なぜパート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?自由への出口か、破滅への扉か?四人の女たちが突っ走る荒涼たる魂の遍路。魂を揺さぶる書下ろし犯罪小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
177
【再読】あの頃どんな感想を持ったのかなぁ私…あれから随分と老いて、でもやっぱりこれはどこを切り取っても「アウト~!」雅子に触れたくて掴めるかもと思ったけれど、空を切って私は私の住む場所へと戻った(良かったよ、帰る場所があって)そんな読後感・・桐野夏生の凄さを再確認するだけだった。2024/01/20
キムチ
72
桐野作品ベスト5。圧倒されんばかりのノワール、最後までア・ウ・トで突っ走る。昔見た「テルマ&ルィーズ」を思い出させる。弁当工場パートの雅子と仲間が求めた世界って平凡からの脱出?で得たのは自由?金?でも手にした後が見えてない女たち。これじゃ単なる○○でしょう・・と思いつつ読む小説って、思いの外熱くなる。読み終えた後の寂寥と空しさ。何かに気づかさせる~目の前の事象の処理だけで展開して行く人間関係が終始。中身のない会話「フーン」としか思えない。世の中は賢い人ばっかじゃないんだよ・・って思わさせられるけど。。2012/04/27
nonpono
65
女による女のための殺人。実際にあったセレブ妻が旦那をバラバラにし、ゴミとして捨てに行った事件がよぎる。こちらはお風呂で解体する。事務的に、職人のように。だから怖い。DV、介護、家庭内別居、浪費、いまでもあるあるな問題も炙り出す。解体より深夜の弁当工場の仕事が怖い。わたしも要領が悪いから1番、大変なご飯を担当してばらまきそうだ。そんなリアリティがひしひし怖い。誰でも日常にあるときは倦み、憤り。それが沸点を通り越したら?また、意外な保険金で人は狂うね。そんな人、たくさん見てきた。圧倒的なクライムノベルである。2025/02/10
えみ
62
何がそこまで彼女たちを駆り立てるのか。この普通じゃない現状にはすっぽりと抜け落ちている何か大切なことがあるはずだった。それなのに…目の前で繰り広げられる凄惨で凶悪な行いに意識を持って行かれて最後の最後までそれが異様なことだとはっきりと認めることができない不思議。まるで奇術にかけられていたような気分である。読者の困惑や動揺まで、すべて織り込んで一つの作品になっている一冊。まさに「クライム・ノベル」の金字塔!喜怒哀楽や驚きや疑うという人が表せる感情表現では伝えられない彼女たちの所業。殺人以上の罪を感じさせる。2024/01/05
kazu@十五夜読書会
61
雅子、43歳主婦。深夜~早朝の夜勤勤務の弁当工場にパートで勤める、パート仲間の主婦が家庭内のトラブルで夫を殺害してしまいその死体を引き受けバラバラにして捨てる決意を、さらにパート仲間を巻き込んでいく、平凡な主婦が犯したおぞましい罪。それが雅子の過去とリンクしていく展開・・・職場だけの付き合いの仲間ために・・。2段組500ページ近い悪夢の作品。知られざる深夜の弁当工場の作業とチームを組むパート仲間の主婦達の連帯は、読み取れたが盛り上がるはずの終盤がさっぱり?雅子はなぜ暴走するのか?それが謎・・・2013/05/03