内容説明
向田邦子の実像に迫る。少女期から死去するまでを編年体で追求。幅広い取材と文献渉猟、新資料の発掘などで、向田邦子の人と文学を解明する書下ろし評伝。
目次
第1章 父の修業…―宇都宮
第2章 人生の味と食物の味…―東京
第3章 男と女という「色」…―鹿児島
第4章 美しい男…―高松
第5章 軍国少女…―目黒高等女学校
第6章 昭和の清少納言…―実践女子専門学校
第7章 手袋を探す…―財政文化社
第8章 クロちゃん…―雄鶏社
第9章 夢の男…―平凡出版
第10章 ナポレオン…―ガリーナクラブ
第11章 翔んでる女…―霞町・南青山
第12章 天国と地獄…―東京女子医大・台湾
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はなびや
3
松田良一は私の近代文学研究の道を開いてくれた恩師である。松田が、その文学講義の中で「作家の原風景が大事なんですよ」と言っていたのを事あるごとに思い返す。『なつかしい時間』に頻回に登場する「風景」とも符合すると思う。松田は学生に、物事を見る時、文学を味わう時に、その表面だけでなくその時代の風物や地理など、作品を読むときには必ず現地を歩くことを勧めていた。文学研究だけでなく散歩の楽しみや、敗残の美学というのも松田がよく好んで使っていた言葉だ。心の軸がぶれる時、師匠の本を読みたくなるのはなぜか、2020/04/25
ロッキー
1
向田邦子さんと、その作品の魅力を深く掘り下げた一書。エッセイ、小説、シナリオ、果ては雑誌類での発言記事まで網羅し、その背景を分析されていて向田フリークには嬉しい限り。心がざわざわする日は落ち着きたくて、また凡庸な日々には刺激が欲しくなって向田作品を読みたくなる。向田作品にはそれを満たす効用があります。それにしても、元祖キャリアウーマンの向田さんが『平成』『令和』を見たら、どんな作品を書かれたか、見てみたかった。詮無い話ですが。最近の八千草薫さんや根津甚八さん逝去の報を聞くと必ず向田作品を連想します。2020/11/04