内容説明
1969年7月、ケネディ家末弟で上院議員のエドワード・ケネディは若い女性秘書を乗せてドライブに出た―。数時間後、クルマは橋から転落、ケネディだけが脱出し、女は水死した。警察への連絡は9時間後。いったい何が起きたのか?“ケネディ家第3の悲劇”を小説化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヘラジカ
22
こちらも実際にあった事件(日本人でも知っている人が多いであろうチャパクィディック事件)を題材としたフィクション。追憶と事故の「その時」を交互に描き、徐々に溶け込ませていく幻想的な表現がお見事。短い作品ではあるが非常に洗練されている。テーマとしても質としても、確かにピューリッツァー賞が好みそうだ(実際には受賞していないけど)。書かれた順番に読んでいなくても、オーツの作品は読めば読むほどに凄さが分かっていく気がする。あと帯のコピーは酷い。よくあることだけど、担当者はちゃんと作品を読んでないんだろうな。2016/02/17
キムキム
6
またオーツさんへの愛が募ってしまう。黒い水が肺に入り込む、女一人。どんな他人に「ここよりもっと息ができる場所がある」と上がる夢を語られる以上に、どっちが空かもわからない今・この場所で沈みながら「私はここよ」と叫びながら堕ちる時間の流れに生きるが詰まりすぎてる。生きねばと。『邪眼』の全てが決算されたの?ってほどに、若い女が抱く大人の男への違和、対象から目を離さず意識を拡大させていく巧さも。あと好きなの、愛すべき記憶の捏造に自分もしっかり同居するところ。あれは、自分の日々こうありたいという夢でもあるので…。2020/04/15
くさてる
4
高名な上院議員の運転していた車が道を飛び出し、川に落ちた。その車に同乗していた若い女性の脳裏に広がっていく、いのちを失うまでのあいだのこれまでの人生の一場面、思い出、現実。シンプルな筋立てというか、結論は最初から明らかであるにも関わらず、面白くて読み進めずにはいられなかった。なんとも救いようが無く、暗く、やりきれない話だけども、だからこそ普遍的な感情を体現したような作品になっていると思う。面白かった。2013/05/15
勉誠出版営業部
2
ジョイス・キャロル・オーツの『ブラックウォーター』を読了。実際の事件を基にした中編。議員の車に同乗していた女性が、水の中で死に向かう数分の間、自身の半生を回想するという体。読みやすいけど、なかなかに実験的な形式。2018/05/19
きっしょう
0
上院議員が運転する車川に落ち、同乗していた女性が、命を失うまでの数分間?に走馬灯のごとく駆け巡るこれまでの人生と妄想の繰り返しが悲しく残酷なまでに描かれる。「とうもろこしの乙女~」で描かれた母親を思い起こした。2013/07/08