内容説明
人にとって家族とは―。孤独な人びとが、それぞれに抱いた小さな夢と幸せ。四季折々のうつろいのなかで、家族の喪失と温かい人間愛を鮮やかに描いた長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
43
26年前の作品ですが古さを感じさせません。東京郊外の大きな欅並木のある通りでの人々の営み。寂しさを内に秘めた大人達に訪れたひと時の癒やし。人が住む街には様々な思惑や噂話、色々あるなと思う。親と子の関係を考えさせられますが、淡々としていて暗くはありません。文章が素直なのか、スルッと気持ちが入りこめて読後感はいいです。ただ、雑種犬を恥ずかしがるのには納得いかず、堂々と可愛がって欲しかったし、雑種や血統書付きと差をつけないのが本当に紳士なのでは?とそこだけは心にチクっときました。2017/06/20
勝部守
8
著者の訃報に接し、久しぶりに著作を手に取った。心が温まる短編連作集。母の好きな作家だったことを思い出した。2015/12/22
ガブリエル
2
池袋から私鉄で30分足らずの郊外の町。欅並木に見守られた通りを舞台に、そこに暮らす人々の出会いと別れ、彼らのささやかな日々を描く物語。「人びとシリーズ」と言われる短編を数多く残した作家らしい。1991年発行の古い本だけど、血の繋がりだけではない人の縁とか、当たり前の思いやりとか、その逆に人のどうしようもない醜さとかがさりげなく描かれていて沁みる。特に自転車屋の老人と、彼が面倒を見ることになった男の子の物語は泣けたな〜。漫画家谷口ジローが、人びとシリーズの短編をコミック選書にしているらしいのでそれも読みたい2024/06/10