内容説明
書下ろし長編歴史哀話。幕末の会津から明治の吉原へ。荒れる女の血のままに、みだらに美しく、荒鷹と情を交わしつつ、時代の嵐のなかを翔んだ、女ひとり。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
126
鷹の眼に魅せられた女の生涯。会津御蔵入りの里で肝煎の娘として生まれ、会津若松城下の鷹匠の家へ嫁ぎながら戊辰戦争を生き抜き、維新後には這いつくばるように明治の吉原を生きた過酷な人生。時代の大転換期の荒波に翻弄されながらも、鷹への恋心を一徹に貫き通した濃密で苛烈な生き様。主人公さよの抑制的感情を恬淡な語り口で綴りながら、行間から滲み出るのは女の情念。読者の情動を煽るような筆致ではないが、悲哀を受け入れる度量と気丈さや、理不尽な宿命をも乗り越えんとする堅固な熱い意志が直截に伝わる。大作ではないが読み応えは十分。2025/01/07
文庫フリーク@灯れ松明の火
42
皆川博子さん3冊め。今は歴史時代小説は書かないと聞く。オビの文は『幕末の会津から明治の吉原へ。荒れる女の血のままに、みだらに美しく、荒鷲と情を交わしつつ、時代の嵐のなかを翔んだ、女ひとり』あらすじはその通りだけれど、受ける感触はかなり違う。会津なまりのせいか、描写の力か、陰惨な場面や性描写でも不思議と嫌悪を感じない。野性の鷹を仕込む鷹匠としての描写は戸川幸夫さんのような。『死の泉』『薔薇密室』の頭の芯がくらくらする感じは無いものの、ギャップと共に不思議な透明感は確かに感じる。→続く2011/03/02
hit4papa
40
幕末から維新にかけて、会津の御用鷹匠のもとに嫁いだ女性の生涯を描いた時代小説。裕福な世話役の娘として育ちながら、消えゆく職である鷹匠の嫁となった主人公。鷹に魅入られ、動乱の最中にあっても、野生の鷹を飼い慣らすべく粉骨砕身します。この過程の微に入り細を穿つ描写が素晴らしい!朝敵となった会津藩は、徐々に窮地に陥り、夫そして主人公の二人の兄たちも戦場へとむかいます。それぞれの愛憎劇を織り込みながら、物語は進みます。この重厚さに魅了されます。主人公をみまう悲劇は、読み進めるのが辛くなるでしょう。ラストは鮮烈です。2024/09/03
巨峰
32
幼き頃に鷹に魅せられた農家の肝煎の娘は、やがて会津藩鷹匠の嫁となるが、すべてを焼き焦がす幕末の混乱が近づく。鷹にだけ惹かれる主人公の造形が素敵ですー2015/04/05
ソングライン
12
幕末の会津、鷹の雛を見つけたことをきっかけに、その孤高な野生に魅せられた少女さよ。やがて会津藩の鷹匠の家に嫁いださよが、経験する幕末の動乱と悲しい運命。主家のために命を捨てねばならない武士の潔さに隠れた生に対する冷たさ、混乱の中、むき出しになる人間の欲望の汚さ、様々な絶望を経験し、吉原の女郎に身を落とす主人公。最後にさよが目指した会津と鷹との再会が切ない物語でした。2019/09/11
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- 和書
- 信用制度の経済学