内容説明
瀬川家は江戸時代に3代続けて瀬川菊之丞という名女形を出した家で、この家に生まれた栄子は幼時より女踊りを得意とした。13歳の時、菊次郎を襲名し、性的倒錯も顕著となって手伝いの安さんと駆け落ちする。その後、画家の沢木紀之が相手だったりするが、舞台の芸はますます冴え…。長編小説「女形一代」。名女形として歌舞伎界の人気を独占した7世瀬川菊之丞の一生。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
74
小説『国宝』の参考文献に掲げられる本著。稀代の女形・中村歌右衛門がモデルと言われる。幼馴染の踊りの女性家元を通じて語られる七世瀬川菊之丞は、芸術家として大成する過程で幾人も犠牲者を生み出すが、三島由紀夫がモデルと思われる画家・沢木紀之との冷たい炎が燃えるような葛藤がとりわけ凄まじい。妻の死や住み込みの土臭い事務員との関係などを経て一層の円熟の境地に達した名優は、堂々たる生涯を終える。晩年に訪れた北海道でのかつての恋人との再会も曰く言い難かった。改めて男性性・女性性とは何かを考えさせられると同時に芸に生き→2025/11/08
リオ
3
6代目歌右衛門をモデルにした作品。 女形の芸における厳しさと言うよりは、女形に捧げた天才役者のスキャンダルとかあれこれ。 それを品のある文体で描いています。 女形とは不思議なものなんだろうな。 そう言えば福助の7代目歌右衛門襲名ってどうなったんだろう。 歌舞伎観たいなと久々思った。2016/05/11
マリアム
3
名女形6代目歌右衛門のフィクション、ノンフィクションの小説です。彼の為に三島が書いた戯曲「朝の躑躅」からのご縁で読みました。上品で分かりやすい文章で引き込まれます。語り手は、彼の幼なじみで舞踊家、松たか子のお祖母さんだそうです。現役中の出版で、ご本人や関係者はどのように読まれたのでしょうか?歌舞伎演目の演者側からの部分は興味深く、観たくなりました。名優の側には、犠牲者の屍が累々としている、歌舞伎の芸は、命がけの重いものなのだと思い知りました。2013/06/21
Gen Kato
2
描写は淡泊だけれど中身は濃厚。この作品、腐の方面の方々にはたまらんのじゃなかろうか。円地文子の三島観も窺えて興味深い。2015/12/06
こまったまこ
2
凄いお話でした。モデルがいると分かり驚きました。昭和の時代に活躍した名女形の人生を親しい友人の女性が過去を振り返って語っているので読みやすいし文章が上品です。この名女形の生き様が凄いです。彼を愛してしまった人は皆破滅に追いやられる。でも彼らはきっとそれを不幸と思わないのでしょう。少年期に恋人だった人との最後は哀しいけれど良かったと思います。作中で演じられる彼の八ツ橋を観てみたいです。2013/06/25




