内容説明
文壇の寵児としての華やかな交遊、結婚、子供の誕生というプライヴェートの充実、剣道とボディ・ビルへの熱中、演劇・映画への傾斜…作家が超人的な生活の中から何を思想の核として剔出するかを鮮烈に示す、昭和三十三年から三十四年にかけての日録「裸体と衣裳」、自らの文学的出発点と修業の日々を語る「私の遍歴時代」を中心に、日常と創作の往還から生み出された思索の結晶体、九篇を収録。
目次
裸体と衣裳
アポロの杯―パリ
ジョルジュ・バタイユ「エロチシズム」
陶酔について
個性の鍛練場
ナルシシズム論
「純文学とは?」その他
余暇善用
私の遍歴時代
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925・1・14~1970・11・25。小説家、劇作家。東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。固有な美意識で彫琢された作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、市ヶ谷陸上自衛隊東部方面総監室にたてこもり、割腹自決(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
96
三島イズムの驚異的な部分を見せつけられた気がします。肉体に陶酔し、演劇や映画に傾倒することで作家でありながらも超人的な生活をし、何を思想の軸にしていたかが伺えます。ボディビルによる肉体改造や肉体から感じるエロティシズムが永遠の生き様のように思えてなりませんでした。また、自らの文学の原点とそこからの成長もつづられ、日常と創作のあり方が伺えて興味深かったです。三島自身、太宰に好意を持たなかったのは本当なのですね。2016/10/15
佐島楓
63
〈大学図書館〉三島の交友関係がわかる「裸体と衣装」、作家としての半生記「私の遍歴時代」が面白い。十五日に及ぶ新婚旅行や娘さんの誕生を愛情たっぷりに書いてあったり、太宰と面会した際のツンデレとしか思えない反応に意外を感じた。知らなかった三島の一面。2019/07/15
hroko
1
「裸体と衣装」、スターでもあるような作家の読まれることを前提にした日記は、令和の現在からすると、不思議と興味を惹かれます。作家がスターでもあるような、そういう時代、文学や教養がすごく重みのあるような時代を意識できる、貴重な読書体験でした。2024/01/14