内容説明
告白と批評の中間形態、秘められた批評と著者自らが言い、文学と行動、精神と肉体との根源的な一致を幻視し、来たるべき死を強く予感させる、最後の自伝的長篇評論「太陽と鉄」を中心に、三十歳の頃の旺盛な創作活動の根柢を明かす「小説家の休暇」称、稀有なる文学者の思索の結晶体ともいえる十二篇を収録。三島文学の全体像とそのデモーニッシュな魅力をあますところなく示す全三巻論集。
目次
太陽と鉄
小説家の休暇
「われら」からの遁走
私の中の「男らしさ」の告白
精神の不純
わが非文学的生活
自己改造の試み
実感的スポーツ論
体操
ボクシングと小説
私の健康
私の商売道具
著者等紹介
三島由紀夫[ミシマユキオ]
1925・1・14~1970・11・25。小説家、劇作家。東京生まれ。学習院時代から文才を注目され、1944年、東大入学と同時に『花ざかりの森』を刊行。47年、東大卒業後、大蔵省に勤務するも、翌年辞職。49年、『仮面の告白』で新進作家として地位を確立。『金閣寺』『鏡子の家』『近代能楽集』等、固有な美意識で彫琢された作品を発表。海外での評価も高い。68年、楯の会結成。『豊饒の海』の最終回を書き上げ、市ヶ谷陸上自衛隊東部方面総監室にたてこもり、割腹自決(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
97
面白かったです。三島イズムが炸裂していますね。告白と批評の中間にあるような精神と肉体の幻視がまさに三島の文学の真髄にあるような気がしてなりません。かと思えば文学者の何気ない思想が紡がれていたりすると、文豪である以前に人間臭いところがあることを感じさせます。文学史における稀有な存在として輝いた三島の文学像と少し変わった魅力を見たような気がしました。言葉にするのが難しいことでもサラリと言語化する姿に共感せずにはいられません。2016/10/15
佐島楓
64
〈大学図書館〉既読のところもあるので飛ばし飛ばし。俳優論はさすが三島、凄いな。ふわっとしたことをがっちり論理的に言語化している。才気に溢れる感じにあてられそう。2019/07/13
ふくしんづけ
15
わからないけど、ちょっとわかる。ちょっとわかるけど、わからない。この按配が、自分にとって、三島由紀夫は良いようである。「太陽と鉄」なんかはまさにそれ。「小説家の休暇」は戒めとして読んでしまう部分も。近いかどうかはどうでもよくて、ぜんぶ一緒くたな海の水になって、ここからここって生きてるようなもん。その中のいくらかを共有できてればいいなっていう。普通に反抗しとこうってところもありますからね。2023/01/03
川上
2
太陽と鉄でひたすら筋肉について語る三島さん(笑)。小説家の休暇では三島イズムに強烈な眠気を覚えてみたり、何の気ない話題では三島さんも普通の一人の人間なんだなって思ってみたり。あと後半はちょっとダレ気味です。 普段自分が感じているけど言語化出来ないことを、さらりと言語化してくれてたりするので、そうそうその気持、その考えって、かゆい所に手が届くこと多しです。2014/12/30
hroko
1
「太陽と鉄」と「実感的スポーツ論」を読んでみたくて。自分のスポーツ・トレーニング体験を語る「実感的スポーツ論」は素直に共感できます。一方で、「太陽と鉄」は、何だか、その背景を知らない不勉強な私には、何を言いたいんだろう、と思う一方、素朴に精神と肉体、ってことなら、分からなくもないかと。その他の収録作では、「作家の休日」が面白かった。スターでもある、作家のそういう日常は、今なら、ツイッターみたいなもので、共有されているのでしょうけれど。読まれることを前提にした日記 ー Blog の過去形ですね。2024/01/14