内容説明
神ならぬ人間の身で世界のすべてを究めたい欲求に憑かれたファウストは、悪魔メフィスト‐フェレスと契約を結ぶ。文豪ゲーテ畢生の大作が柴田翔の躍動する新訳で甦る。
目次
献げる言葉
舞台での前狂言
天上の序曲
悲劇第1部
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マウリツィウス
15
【追想:『《ファウスト》』】《古代古典》としての『ファウスト』を読んでいた。《もう、読む必要がなくなったのが「今」となる》。《恐らくは、主題に秘められる「謎が解けた」からだ》。《『人』はそれを「乗り越えられる」》。《「葛藤」、これを克服する為に『人』が得なくてはならないもの》、《それを導き出せた時を「成長」と呼ぶのかもしれない》。《『ヒトの運命』を知る時に、その『ヒトの真実』を「識らない」。「ヒトが人を識ることは、全てを識らない時」》、《『自己』を欺くことなく見つめる》。《その時にも、啓けない謎が解く》。2015/03/16
きゃれら
11
悪魔に魂を売る、と言えばこの作品。で、この第一部は何をしているかというと、おい、お前そんなことなの?という気がしないでもない。悪魔の手を借りないといけない、という時点で、そういうことに手を出してもろくなことに…。それはそれとして、世の中を切り取る鋭い視線と言葉遣いの芳醇は、翻訳でも伝わってきた。下巻へ。2021/09/18
大泉宗一郎
11
『ファウスト伝説』を戯曲化したゲーテの古典文学。知識、幸福への限界に嘆くファウスト教授に、魂と引き換えに人生の喜怒哀楽を味あわせようとする悪魔メフィストフェレス。後世のあらゆる作品で使い尽くされたこの設定を、かび臭い古典として打ち捨てず、”読み物”引き留めているのはひとえに溢れ出る詩情と、ウィットに富んだ言葉遊びによるものだろう。目もくらむほどの修飾とレトリックで時々あらすじを見失うが、言葉の奔流に流されるまま恍惚と陶酔の世界に浸れる。2018/12/19
不見木 叫
10
第一部。詩的でリズミカルな戯曲。神と悪魔の賭け。メフィストとファウストの契約。ヴァルプルギスの夜。ファウストの悲恋。Verweile doch, du bist so schoen.(時よ止まれ、お前は美しい。)2022/02/28
明智紫苑
10
岩波文庫版と比べて、読みやすくとっつきやすい訳。それにしても、ファウストの野郎はロクでもないダメ男だな。アーサー王伝説のランスロットと並ぶ、西洋文学のダメ男の双璧だ。2015/08/08