感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
36
2.26事件に連座したとして禁錮5年の刑の齋藤瀏を父に持ち、死刑となった栗原安秀は幼馴染だった齋藤史。その衝撃を「暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた」と詠む。2.26事件を詠んだ歌たちに息を吞んだことを思い出す。が、それだけが私にとっての魅力ではなく、自然や生き物たちへ向ける眼差しにも共感したし、「老い」を見つめる矜持も好きだ。本書を選んだのは、歌集だけではなく(すでに知っていた歌もあり)、全く触れたことのなかった散文を読みたかったから。エッセイ「ちゃぼ交遊記」がめっちゃ私好み。2025/10/12
傘緑
15
「暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた 歴史の陰のくらきあたりをさまよひて廻る音ありしぼる声あり 革命を持たざる国に生まれ来て風雨ほどほどに有りて終わるか」以前に挫折した工藤美代子の『昭和維新の朝』を読むはずみをつけるための読書。昭和を知らない世代の一人として先の時代をどう捉えるのか、が常に揺れ動いている現状。歴史資料にはない時代の空気のようなものがこの和歌から立ちのぼる、祖父母の語る昭和あるいは戦時中に近い感覚、時代の肉声。「昭和終わりてのちのきさらぎ二十六日小雪のあとすこし明るむ」2016/09/12
hamham
13
明治に生まれ第一次、第二次世界大戦を経て、オウムのサリン事件を詠い、新世紀の夜明けを見届けた、歴史の立会人齋藤史。齋藤史を知ったのは二・二六事件の青年将校栗原安秀(イケメン)の幼馴染という立場からで、栗原については『おやじとわたし』の中で触れられており、互いを「史公」「くりこ」と呼ぶ気安さや、栗原がごはんを食べに度々齋藤家に訪れる様が描かれている。彼の性格の明るさや真面目さが知れて大変嬉しい。『ちゃぼ交遊記』はそのままこうの史代の漫画で想像できる楽しい鶏エッセイ。こうの史代ファンにもお薦めしたい。2015/10/20
den55
2
1909年 明治42年2月14日 – 2002年4月没、93歳。この1冊は最晩年の2001年文庫本として出版。 父 瀏は陸軍少将で、歌人でもあった。二・二六事件では、父を通じて親交があった青年将校の多くが刑死し、父も事件に連座して禁固5年となる。戦中、東京から長野県長野市に疎開し以降は長野に長く住む。先ず、私の拙い書評を読まれる方のために触れねばなるまいと思う。二・二六事件であるが、栗原安秀中尉、酒井直中尉の二人ですが、特に栗原中尉とは「クリコ」「ふみ公」と呼び合うほどの仲だったという。2026/03/28
月音
1
二・二六事件の関係者を父と幼馴染に持つ歌人。明治に生まれ、大正・昭和の暗部を間近に見てきた貴重な歴史の証人といえる。家庭人としては母と夫を同時期に介護し、決して平坦でなかった人生。日々の生活や、動植物への愛情に根差した歌にもそれらは影を落としている。随筆もまた、いい。ユーモアあふれるちゃぼや犬、馬との触れ合い、牧水・白秋たち作家との思い出。二・二六事件については感情を殺し、淡々と数日間の推移とそれに続く裁判、刑の執行の模様を述べていることが逆に事の悽愴さを語っている。⇒続2023/02/23




