感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
15
「暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた 歴史の陰のくらきあたりをさまよひて廻る音ありしぼる声あり 革命を持たざる国に生まれ来て風雨ほどほどに有りて終わるか」以前に挫折した工藤美代子の『昭和維新の朝』を読むはずみをつけるための読書。昭和を知らない世代の一人として先の時代をどう捉えるのか、が常に揺れ動いている現状。歴史資料にはない時代の空気のようなものがこの和歌から立ちのぼる、祖父母の語る昭和あるいは戦時中に近い感覚、時代の肉声。「昭和終わりてのちのきさらぎ二十六日小雪のあとすこし明るむ」2016/09/12
hamham
13
明治に生まれ第一次、第二次世界大戦を経て、オウムのサリン事件を詠い、新世紀の夜明けを見届けた、歴史の立会人齋藤史。齋藤史を知ったのは二・二六事件の青年将校栗原安秀(イケメン)の幼馴染という立場からで、栗原については『おやじとわたし』の中で触れられており、互いを「史公」「くりこ」と呼ぶ気安さや、栗原がごはんを食べに度々齋藤家に訪れる様が描かれている。彼の性格の明るさや真面目さが知れて大変嬉しい。『ちゃぼ交遊記』はそのままこうの史代の漫画で想像できる楽しい鶏エッセイ。こうの史代ファンにもお薦めしたい。2015/10/20
月音
1
二・二六事件の関係者を父と幼馴染に持つ歌人。明治に生まれ、大正・昭和の暗部を間近に見てきた貴重な歴史の証人といえる。家庭人としては母と夫を同時期に介護し、決して平坦でなかった人生。日々の生活や、動植物への愛情に根差した歌にもそれらは影を落としている。随筆もまた、いい。ユーモアあふれるちゃぼや犬、馬との触れ合い、牧水・白秋たち作家との思い出。二・二六事件については感情を殺し、淡々と数日間の推移とそれに続く裁判、刑の執行の模様を述べていることが逆に事の悽愴さを語っている。⇒続2023/02/23
ヒ
1
気位が高い2017/08/01