内容説明
船員をやめたジムは、自分自身の抱く誠実にして高邁な自己像の実体を求めて「白人社会」を離れて行く。語り手マーロウ船長の友人でサマランで商社をいとなむシュタインは、ジムをスマトラのパトサン出張所に派遣する。パトサンで原住民から伝説的な名声を得たジムは理想的な統治者としてふるまうが、悪漢ブラウンの出現で平和な村に事件が起こる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
38
未開地の川を遡ったさらに奥。ジムがたどり着いた先は、『闇の奥』のクルツがいたのと同じような奥地だった。そこで、ジムは、原住民たちに「トアン・ジム」と呼ばれるようになり、原住民たちの絶対服従に戸惑いながらもそれを誇らしく思っていた。そのまま行けば、ジムはクルツのようになっていたかもしれない。だが、この地に白人の悪漢が現れたことが、ジムを破滅させる。ジムは恐らく自分が凡人であることを誰より知っていたのだろう。それでも、英雄になろうとし続けたのがたった一枚の手紙のせいだったのなら、それは何と辛いことか。2016/02/09
rueshё
4
読了
のうみそしる
2
『誰だって、誰だって大した人間じゃないんだ』という言葉に象徴される、人間の不完全さ。周りからは英雄に見える姿と内部の葛藤。ロマンチックだったんだな。『真実なんてものは、なにか残酷で些細な、しかし恐ろしい破局によってのみわれわれの中から引き出されてくるものなのだから』2024/11/23
らんまる
1
下巻の方がまだおもしろかった。しかし、マーロウの語りの形式という構造自体があまり肌に合わない。2010/11/22
AR読書記録
0
これが実際に語りによっていたとしたら,自己の視点から神の視点まで自在に行き来し,詩的に荘厳に語るさまは,まるで預言者かなにかのようだと思ってしまうな.酒場かどこかでの問わず語りのレベルでない... というのはともかくとして,登場人物みな,なんていうか,極端.悪人はとことん悪人,卑劣漢はとことん卑劣漢(コルネリウスの描写に何回「卑劣」と書かれたことか).ジムもまたあまりにもまっすぐ.結末が近づくにつれて読むのがつらくなります.いろいろ読み込む点の多い小説だと思います.2013/01/13
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